わいせつ目的略取(りゃくしゅ)罪で逮捕されるケースと刑罰
- 性・風俗事件
- わいせつ目的略取
令和3年に東京都足立区で認知された犯罪件数は、3212件でした。
わいせつ行為をする目的で、他人を車や密室に連れ込むなどして自己の支配下に置いた場合は、わいせつ目的略取罪によって罰せられる可能性があります。
もしご家族がわいせつ目的略取罪で逮捕されてしまった場合や、わいせつ目的略取罪にあたる行為をしてしまった場合は、すぐに弁護士へご相談ください。
今回はわいせつ目的略取罪について、構成要件・法定刑・逮捕後の流れ・家族がとるべき対応などをベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「令和3年 区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数」(警視庁))
1、わいせつ目的略取罪とは
わいせつ目的略取罪とは、わいせつの目的で人を略取した場合に成立する犯罪です(刑法第225条)。
第二百二十五条 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
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(1)わいせつ目的略取罪の構成要件
わいせつ目的略取罪が成立するには、以下のすべての構成要件を満たす必要があります。
- ① わいせつの目的を有すること
強制性交(姦淫)など、被拐取者の性的な自由を侵害する目的を有していることが要件となります。具体的には、被拐取者に対して自らわいせつ行為をし、又は、第三者にわいせつ行為をさせる目的、あるいは、被拐取者にわいせつ行為をさせる目的をいいます。 - ② ①の目的により、他人を略取したこと
暴行または脅迫を手段に、他人をその生活環境から不法に離脱させ、自己または第三者の実力的支配下に移したことが要件となります。
- ① わいせつの目的を有すること
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(2)「略取」と「誘拐」の違い
刑法第225条では、「略取」に加えて「誘拐」も処罰の対象としています。
「略取」と「誘拐」は、いずれも他人をその生活環境から不法に離脱させ、自己または第三者の実力的支配下に移す行為です。
ただし略取と誘拐では、上記目的のために用いる手段に違いがあります。
具体的には、略取は暴行または脅迫を手段としますが、誘拐は欺罔または誘惑を手段とするものと解されています。
(例)- 被害者の腕を掴んで無理やり車の中に連れ込む行為
→略取 - 「契約の手続きに必要な書類を書いてほしい」などと騙して車の中に誘い込む行為
→誘拐
- 被害者の腕を掴んで無理やり車の中に連れ込む行為
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(3)わいせつ目的略取罪の法定刑
わいせつ目的略取罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
わいせつ目的誘拐罪や、営利・結婚・生命または身体に対する加害を目的とする略取・誘拐罪についても同等の法定刑が設定されています。
2、「わいせつ目的」とは?
「わいせつ目的」には、被拐取者の性的な自由を侵害する目的が広く含まれます。
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(1)「わいせつ目的」の例
たとえば、以下のような目的が「わいせつ目的」に当たります。
- 強制性交等の目的
- 強制わいせつの目的
- ポルノ画像を撮影する目的
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(2)実際にわいせつ行為をした場合に、追加で成立する犯罪
わいせつ目的で被害者を略取した(自己または第三者の支配下に置いた)後、実際にわいせつ行為をした場合には、わいせつ目的略取罪以外にも以下の犯罪などが成立します。
- ① 強制わいせつ罪(刑法第176条)
法定刑:6か月以上10年以下の懲役
13歳以上の者に対して、暴行または脅迫を用いて被害者の反抗を著しく困難にしたうえで、わいせつな行為をした場合に成立します。
なお、13歳未満の者に対してわいせつな行為をした場合には、暴行や脅迫を用いておらず、また、同意があったとしても、強制わいせつ罪が成立します。 - ② 強制わいせつ致死傷罪(刑法第181条第1項)
法定刑:無期または3年以上の懲役
強制わいせつ罪に該当する行為により、被害者を死傷させた場合に成立します。 - ③ 強制性交等罪(刑法第177条)
法定刑:5年以上の有期懲役
13歳以上の者に対して、暴行または脅迫を用いて被害者の反抗を著しく困難にしたうえで、性交・肛門性交・口腔性交をした場合に成立します。
また、13歳未満の者に対して性交・肛門性交・口腔性交をした場合には、強制わいせつ罪と同様、手段の如何や同意の有無を問わず強制性交等罪が成立します。 - ④ 強制性交等致死傷罪(刑法第181条第2項)
法定刑:無期または6年以上の懲役
強制性交等罪に該当する行為により、被害者を死傷させた場合に成立します。 - ⑤ 青少年保護育成条例違反
法定刑:2年以下の懲役または100万円以下の罰金(東京都の場合)
青少年(18歳未満の未成年者)とみだらな性交または性交類似行為をした場合に成立します。 - ⑥ リベンジポルノ防止法※違反(同法第3条第1項)
(※正式名称:私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)
法定刑:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
性交の場面や裸体などの写真を撮影し、被害者本人に無断で、被害者を特定できるような方法でインターネット上へアップロードした場合等に成立します。
わいせつ目的略取罪と上記各犯罪は、前者が手段、後者が結果である「牽連犯」の関係にあると判断されると、もっとも重い刑によって処断されることになります(刑法第54条第1項後段)。
- ① 強制わいせつ罪(刑法第176条)
3、わいせつ目的略取罪で逮捕された後の流れ
わいせつ目的略取罪で逮捕された場合、刑事手続きを通じて処分が決定されます。刑事手続きの流れは、大まかに以下のとおりです。
- ① 逮捕~勾留請求
- ② 起訴前勾留~起訴
- ③ 起訴後勾留~公判手続き
- ④ 判決~控訴・上告
- ⑤ 判決の確定・刑の執行
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(1)逮捕~勾留請求
逮捕後72時間以内に、検察官が裁判官に対して勾留請求を行います(勾留請求が行われないこともあり、その場合は釈放されます)。
裁判官は、被疑者による罪証隠滅または逃亡のおそれの有無などを審査したうえで、勾留の理由があると認めれば速やかに勾留状を発します(刑事訴訟法第207条)。 -
(2)起訴前勾留~起訴
裁判官によって勾留状が発せられると、身柄拘束が逮捕から起訴前勾留へ移行します。起訴前勾留の期間は10日間まで、延長により最長20日間までです(刑事訴訟法第208条)。
検察官は、起訴前勾留の期間中に、被疑者を起訴すべきか否か判断します。嫌疑なしまたは嫌疑不十分であれば不起訴となるほか、嫌疑が確実でも検察官の判断で不起訴となる場合があります。 -
(3)起訴後勾留~公判手続き
検察官によって起訴された場合、被疑者の呼称は「被告人」へと変わり、身柄拘束は起訴後勾留へと移行します。起訴後勾留の期間は当初2か月間ですが、1か月毎に更新が認められています(刑事訴訟法第60条第2項)。
起訴から1か月程度経過した時期を目安に、裁判所において公判手続きが行われます。公判手続きは、検察官が犯罪事実を立証し、被告人はそれに反論する形で進行します。
公判手続きにおける被告人の方針は、無罪を主張して争うか、または罪を認めたうえで量刑を争うかの2通りに分かれます。どのような方針で臨むべきかということは、弁護人(弁護士)と相談して決めることになります。 -
(4)判決~控訴・上告
審理が終了すると、裁判所が判決を言い渡します。無罪であれば直ちに身柄が解放されますが、実刑判決(執行猶予がつかず、禁錮刑、懲役刑が言い渡された場合)であれば起訴後勾留が継続します。
判決に不服がある場合は、高等裁判所に対する「控訴」が認められます。控訴審判決についても、要件を満たす場合には最高裁判所に対する「上告」が可能です。
控訴・上告の期間は、いずれも判決言渡日の翌日から起算して14日間となります(刑事訴訟法第373条、第414条)。 -
(5)判決の確定・刑の執行
期間内に適法な控訴・上告が行われず、または上告審判決の言渡しから10日間が経過すると、判決が確定します。
その後、確定した判決に基づき刑が執行されます。懲役刑の場合は、刑務所に収監されることになります。ただし、全部執行猶予付判決の場合は、刑の執行が一定期間猶予されます。
4、わいせつ目的略取罪で家族が逮捕された場合にすべきこと
わいせつ目的略取罪で家族が逮捕されたとの連絡を受けた場合、本人をサポートするため、速やかに以下の対応を行いましょう。
- ① 早期に弁護士へ依頼する|私選弁護人が望ましい
- ② 被害者との示談を試みる
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(1)早期に弁護士へ依頼する|私選弁護人が望ましい
まずは、すぐに弁護士へ相談することが大切です。取調べに関するアドバイスや家族との連絡窓口など、さまざまなサポートを受けることができます。
資力水準によっては国選弁護人を選任してもらえる場合もありますが、基本的には私選弁護人を選任することが望ましいです。国選弁護人の場合は、担当する弁護人を指名するなどして選ぶことはできませんが、私選弁護人であれば、刑事弁護の経験が豊富な弁護士を自ら選んで依頼することができます。 -
(2)被害者との示談を試みる
わいせつ目的略取罪の場合、被害者との示談が成立するか否かが、情状事実の中でも高い重要度を占めます。
被害者に対する謝罪・被害弁償を行いつつ、重い刑事処分の可能性を少しでも下げるため、早急に示談交渉へと着手しましょう。もっとも、加害者本人やその家族が直接交渉を進めると、示談成立が困難となる場合もあるため、弁護士に一任することが賢明です。弁護士にご依頼いただければ、被害者との示談交渉も全面的に代行いたします。
5、まとめ
わいせつ目的略取罪で逮捕されると、長期間にわたる身柄拘束の末に、実刑判決を受けて刑務所に収監される可能性があります。もし家族がわいせつ目的略取罪で逮捕されてしまったら、速やかに弁護士のサポートを受けましょう。
ベリーベスト法律事務所は、刑事事件で逮捕されてしまった被疑者やご家族のため、さまざまなサポートをご提供いたします。逮捕された家族を助けてあげたいとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスにご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士がサポートいたします。
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