盗撮で逮捕|初犯と再犯の違いと逮捕後の流れを解説

2023年07月13日
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盗撮で逮捕|初犯と再犯の違いと逮捕後の流れを解説

令和4年4月、足立区内のスーパーマーケットの女子トイレで複数の女性を盗撮した容疑で逮捕された男性は、前年2月にも同様の盗撮事件で逮捕された経歴がありました。

「盗撮」は、犯罪行為のなかでもとくに常習性が高いものです。いちど厳しい刑罰を受けても、再び罪を犯してしまう方も少なくありません。

本コラムでは、盗撮事件における初犯と再犯の違い、逮捕された場合の刑事手続きの流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。

1、「盗撮」で問われる罪とは?

「盗撮」は犯罪行為ではありますが、「盗撮罪」という犯罪が令和5年6月現在、法律で規定されているわけではありません。
後述するように撮影罪という形での整理をした刑法改正が進んでいますが、新法が施行されるまではあくまで現行の仕組みで取り扱われます。
盗撮行為は、状況に応じて、以下で説明する三種類のうちいずれかが適用されて処罰の対象となるのです

  1. (1)都道府県の迷惑防止条例違反

    盗撮行為は、都道府県が定める「迷惑防止条例」によって処罰されます。

    迷惑防止条例という名称は通称であり、東京都では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」が正式名称でとなります。

    東京都の迷惑防止条例第5条1項2号には、以下のような場所での盗撮行為が禁止されています。

    • 住居・便所・浴場・更衣室など、人が通常は衣服の全部または一部を着けないでいるような場所
    • 公共の場所・公共の乗物、学校・事務所・タクシーなど不特定または多数の人が利用し、または出入りする場所や乗物


    また、東京都の迷惑防止条例では、実際に撮影する行為だけでなく、撮影目的でカメラなどを差し向けたり、設置したりする行為も処罰の対象となります。

    迷惑防止条例違反の罰則は1年以下の懲役または100万円です

  2. (2)軽犯罪法違反

    軽微な秩序違反行為を規制する軽犯罪法も、盗撮を罰する法律のひとつです。
    軽犯罪法第1条23号には、正当な理由がないのに、住居・浴場・更衣場・便所など人が通常は衣服を着けないでいるような場所をひそかにのぞき見た者を罰する規定があります。
    本号は「窃視の罪」とも呼ばれており、直接に盗撮を罰するものではありません。
    しかし、たとえば「自宅の脱衣場にカメラを設置して客人の裸を盗撮した」など、迷惑防止条例では規制できない場所での盗撮は、のぞき」行為でもあるため、本号が適用されるのです。

    軽犯罪法違反の罰則は拘留または科料です

  3. (3)刑法の建造物侵入罪

    迷惑防止条例や軽犯罪法では規制できない状況では、刑法第130条の「建造物侵入罪」が適用されます。
    建造物侵入罪は、正当な理由なく他人が管理する施設などの建造物に侵入した者を罰する犯罪です。
    たとえ立ち入り自由な公共施設や商業施設であっても、盗撮という犯罪目的での立ち入りは正当な理由ではないために、不法な侵入とみなされて、本罪による処罰の対象になります。

    建造物侵入罪は不法な侵入を罰する犯罪であるため、実際に盗撮をしたか、撮影して画像を保存したのかなどは問いません。
    たとえば、「盗撮を試みたが相手や周囲の人に気づかれてしまい未遂に終わった」といった場合にも、建造物侵入罪は成立します。

    建造物侵入罪の法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です

  4. (4)刑法に「撮影罪」が新設されることが決定している

    迷惑防止条例の内容は地域によって異なっているため、「ある地域では罪となるが別の地域では罪にならない」といった事態が起こり得ます。
    しかし、近年では、性犯罪や性暴力に対して厳しい処罰を求める声が増しています。
    このような状況に対処するため、政府は刑法に「撮影罪」を新設することを決定しています

    要綱案によると、人の性的な部位・姿態・下着をひそかに、もしくは拒絶困難な状態で撮影する行為が、撮影罪による処罰の対象となります。
    従来よりも格段に重い法定刑が定められているため、過去に盗撮をしてしまったことがある人は、再犯をしないようにいまのうちから治療などの対処をしておきましょう

2、初犯と再犯の扱いの違いとは?

以下では、盗撮事件の初犯と再犯の違いを解説します。

  1. (1)「初犯」と「再犯」の意味

    一般的に「初犯」とは初めて罪を犯して事件化された者、「再犯」とは以前にも罪を犯した経歴があり事件化が二度目以上の者を指します。
    簡単にいえば「警察の捜査対象になった経歴がない者/ある者」ということです。

    ただし、法律的には、初犯は「懲役の前科がない者」、再犯は「懲役の前科がある者」として区別されます。
    これまでに刑事事件を起こしたことがない、あるいは以前にも犯罪行為があったものの懲役を科せられたことがない者が事件を起こして懲役を科せられる場合は、「初犯」となります。
    一方で、刑事事件を起こして懲役を科せられ、その刑の執行が終わった日、または刑の免除を受けた日から5年以内に再び罪を犯して、その者が有期の懲役に処される場合が「再犯」となるのです。

  2. (2)再犯ではさまざまな面で不利になる

    初犯と再犯を比べると、再犯のほうがさまざまな面で不利な扱いを受けます

    最も不利な扱いとなるのが、刑法第57条による「再犯加重」です。
    再犯事件では懲役の上限が2倍になるため、たとえば建造物侵入罪が適用されると懲役の上限が6年となります
    3年を超える懲役には執行猶予がつかないため、実刑判決が言い渡されて刑務所に収監されてしまう危険度が高まるという点はきわめて重大だといえます。

    また、法的な意味での厳密な再犯ではなくても、同種の犯罪を繰り返した場合は、検察官や裁判官の「以前の事件を反省していない」という評価につながりやすく、起訴されやすくなったり、罰則や法定刑の範囲のなかでも刑罰が重く傾きやすくなったりします。
    つまり、過去にも盗撮事件を起こしたことがあるなら、厳しい処分が下される危険が高まることになるのです。

  3. (3)盗撮事件では常習加重の危険が高まる

    盗撮の再犯に対して迷惑防止条例違反が適用される場合は「常習加重」の危険が高まります。

    東京都の迷惑防止条例には、常習として盗撮行為をはたらいた場合、通常は1年以下の懲役または100万円以下の罰金であるところを、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に加重するという規定があります
    盗撮の「常習」とは、盗撮を繰り返す習癖があることを意味するため、再犯であれば常習と評価される危険が大いに高まるでしょう。

    なお、警察が押収したスマホから大量の盗撮画像が発見されたなど、繰り返し盗撮行為をはたらいていた状況が明らかになれば、たとえ初犯であっても常習として刑が加重されることがあります。

3、盗撮の再犯で逮捕されるとどうなる? 刑事手続きの流れ

盗撮の再犯として逮捕された場合でも、刑事手続きの流れは初犯のときと同じです。
以下では、刑事手続きの基本的な流れを確認していきましょう。

  1. (1)逮捕・勾留による最大23日間の身柄拘束を受ける

    盗撮容疑で逮捕されると、警察の段階で48時間以内、送致されて検察官の段階で24時間以内、合計で72時間にわたる身柄拘束を受けます。
    この期間は警察官や検察官による取り調べが続くため、自宅へ帰ることも、家族と連絡を取ることも許されません。

    さらに、検察官の請求によって勾留が認められてしまうと、最短で10日間、最長では20日間にわたって身柄拘束が延長されます。
    勾留を受けている期間も、帰宅や連絡の自由は認められません。

    逮捕・勾留による身柄拘束は最大で23日間となるため、長期にわたって一般社会から隔離された状態が続くことになるのです

  2. (2)検察官が起訴・不起訴を判断する

    勾留が満期を迎える日までに、検察官が起訴・不起訴を判断します。
    「起訴:とは刑事裁判を提起すること、「不起訴」とは刑事裁判の提起を見送るということです。

    起訴された時点で容疑者の立場は被告人へと変わり、刑事裁判を受ける身としてさらに勾留されます。
    被告人としての勾留の期限は1か月ですが、刑事裁判が終結するまでは何度でも延長が可能です。
    通常、起訴からおよそ1~2か月後に初回の公判が開かれ、以後、おおむね一か月に一度のペースで公判が開かれます。
    起訴から終結までに数回の審理を経るので、早くても3~4か月、争いがあり審理に時間がかかる事件では半年程度の勾留が続くことになります。

    一方で、不起訴と判断された場合は、刑事裁判が開かれず身柄拘束の必要がなくなるため、ただちに釈放されます
    日本の法律では刑事裁判を経なければ刑罰は科せられないので、懲役や罰金を科せられたり、前科がついてしまったりすることはありません。

  3. (3)刑事裁判が開かれる

    刑事裁判では、捜査機関や弁護人が提出した証拠をもとに、裁判官が審理して有罪・無罪を判断します。
    ただし、検察官は確実に有罪判決を得られる確証があるかを吟味したうえで起訴に踏み切るため、検察官が起訴した事件の有罪率は非常に高いといえます

4、家族が盗撮の再犯で逮捕されてしまったら弁護士に相談!

もし、あなたのご家族が「盗撮容疑で逮捕された」と聞かされて間もないなら、現在は警察・検察官による「72時間以内の身柄拘束」の段階にあるものと考えられます。
また、逮捕直後の72時間以内の段階では、たとえ家族でも面会できません。
この段階で逮捕された本人と面会できるのは、法律によって接見を認められている弁護士だけです。
もしご家族が逮捕されてしまったら、速やかに、弁護士にまでご連絡ください

  1. (1)素早い示談交渉で不起訴を目指せる

    以前にも盗撮事件を起こしており、再び盗撮を犯して逮捕されてしまったという状況では、刑事裁判に発展すれば以前よりも厳しい処分を受ける可能性は高くなります。
    厳しい刑罰や前科が増えてしまう事態を避けたいと望むなら、不起訴を目指すのが最善です。

    不起訴を得るためには、被害者との示談交渉が重要になります。
    しかし、盗撮事件の多くは特定の相手ではなく偶然その場に居合わせた人が被害者になるため、被害者の住所や連絡先もわからず、誰と示談交渉をすればよいのかさえわかりません。

    弁護士に依頼すれば、捜査機関へのはたらきかけによって被害者の情報を入手し、示談交渉を進められる可能性があります。
    盗撮をはたらいた本人やその家族に対して強い憤りや嫌悪を抱いている被害者の警戒心を和らげ、安全な示談交渉を進めるためにも、弁護士に対応を一任することをおすすめします

  2. (2)更生に向けた対策を尽くして刑罰の軽減を目指せる

    起訴の回避が難しく、刑事裁判に発展する可能性が高い場合には、できる限り刑罰を軽減するのを目指すことになります。

    執行猶予や罰金といった有利な判決を得るためには、被害者への謝罪や弁済だけでなく、本人の更生に向けた対策が必須です。
    どのような対策があれば「更生が期待できる」という判断につながるのかは、事案によって異なります。
    深い反省はもちろん、家族による監督強化や盗撮行為に依存してしまう習癖を医学的なアプローチで改善を目指すといった対策が必要になる可能性も高いでしょう

    とくに、過去にも盗撮事件を起こした経歴があるなら、更生の可能性が高い対策を示さないと有利な判決を得るのは困難です。
    どのような対策が有効であるかを判断するのは一般の方には難しいため、弁護士のアドバイスやサポートは欠かせないでしょう。

  3. (3)早期の身柄解放が狙える

    逮捕されている盗撮事件は、盗撮行為の目撃者がいることは少なく、被害者も被害状況を認識しているわけではありません。押収された盗撮画像や動画の証拠などで、基本的に立証ができます。そのため、被害者との接触への懸念といった障壁が少なく、勾留を阻止できるチャンスのある事案が多いです。既に勾留が決まっていても、準備すれば数日内の釈放に至れているケースもあるため、積極的に相談して頂きたいです。

5、まとめ

盗撮の再犯事件では、条例の規定によって懲役の上限が加重されたり、裁判官が厳しく評価して刑罰が重い方向へと傾きやすくなったりします。
「反省している」「二度と盗撮はしない」と述べても、再び盗撮を犯してしまったのであれば、厳罰を避けるのは難しいでしょう。

もしご家族が盗撮の再犯として逮捕されてしまったら、べリーベスト法律事務所にご連絡ください。
盗撮事件をはじめとして数多くの刑事事件を解決してきた弁護士が、穏便な解決を目指して全力でサポートします

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています