代襲相続は兄弟姉妹でも発生する? おい・めいが相続人になる場合の注意点
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東京都足立区が公表している統計資料によると、足立区の令和3年の人口総数は69万1002人であり、そのうち65歳以上の人口(高齢者人口)は17万1715人となっています。全人口に占める高齢者人口の割合は、約25%であり、足立区でも高齢化が進んでいます。
相続人のなかに被相続人よりも前に死亡している人がいる場合には、代襲相続が発生する可能性があります。代襲相続は、被相続人の子どもが死亡した場合と被相続人の兄弟姉妹が死亡した場合とで扱いが多少異なるので、代襲相続が関係する方は、正確に理解しておくことが大切です。
今回は、兄弟姉妹で代襲相続が発生する場合の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、兄弟姉妹も代襲相続に該当する?
代襲相続とは、どのようなものなのでしょうか。また、兄弟姉妹でも代襲相続が発生することがあるのでしょうか。
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(1)代襲相続とは
代襲相続とは、被相続人よりも先に、本来相続人になるはずの被相続人の子どもまたは兄弟姉妹が死亡していた場合において、その者の子どもが本来の相続人に代わって相続をすることができる制度のことをいいます。
たとえば、被相続人に配偶者A、長男B、長女Cがいたとして、長女Cが被相続人よりも先に死亡していたものとします。長女Cには、Dという子ども(被相続人からみると孫)がいた場合には、被相続人の相続人は、配偶者A、長男B、孫Dの3人となります。このように、孫Dが相続人になることを代襲相続といいます。
代襲相続は、相続人の死亡によって生じるのが一般的ですが、「相続欠格」または「相続廃除」によって本来の相続人が相続権を失った場合でも生じます。
相続欠格とは、相続人が相続に関して犯罪行為をした場合(被相続人を殺害した場合や、詐欺や強迫によって遺言書を作成させた場合など)や不正を犯した場合(遺言書を偽造した場合など)に当然に相続権を失う制度です。相続廃除とは、相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱、著しい非行などをした場合に家庭裁判所の審判によって相続権を失わせる制度です。
なお、相続放棄は、初めから相続人でなかったものとみなされますので、相続放棄では代襲相続は発生しません。 -
(2)兄弟姉妹での代襲相続
代襲相続は、被相続人の子どもだけではなく、被相続人の兄弟姉妹に関しても発生します。
たとえば、被相続人に子どもがおらず、両親を含む直系尊属が死亡していた場合を前提とし、弟Aと妹Bがいたとして、妹Bが被相続人よりも先に死亡していたものとします。妹BにはCという子ども(被相続人からみるとおい・めい)がいた場合には、被相続人の相続人は、弟A、おい・めいCの2人となります。
このように本来の相続人が被相続人よりも先に死亡していた場合に、その子どもが本来の相続人に代わって相続することができるという点では、被相続人の子どもが死亡した場合の代襲相続と共通します。しかし、兄弟姉妹の代襲相続に関しては、代襲相続の範囲に制限がある点に注意が必要です。
被相続人の子どもが死亡して代襲相続が発生する場合には、被相続人の孫が代襲相続人になります。被相続人の孫が被相続人よりも先に死亡しており、被相続人の孫に子ども(被相続人のひ孫)がいた場合は、ひ孫が再代襲相続によって相続人になります。このように、被相続人の子どもに関して代襲相続が発生する場合には、理論上は、無限に代襲相続が続いていくことになります。
しかし、被相続人の兄弟姉妹の代襲相続の場合には、代襲相続が発生するのは、被相続人のおい・めいまでです。被相続人の子どもの代襲相続のように、おい・めいの子どもや孫について再代襲や再々代襲は生じませんので注意が必要です。
2、兄弟姉妹で代襲相続が発生した場合の相続割合
兄弟姉妹で代襲相続が発生した場合、相続割合がどのようになるか確認しましょう。
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(1)代襲相続が発生した場合の相続割合
代襲相続は、本来の相続人の地位を代襲相続人がそのまま引き継ぐことになりますので、代襲相続人の相続割合は、本来の相続人の相続割合と同じです。被相続人の子どもの代襲相続であっても、被相続人の兄弟姉妹の代襲相続であってもこの点は変わりません。
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(2)具体的なケース
以下では、被相続人に配偶者がいる場合といない場合に分けて、兄弟姉妹で代襲相続が発生した際の相続割合について説明します。
① 被相続人に配偶者がいる場合
被相続人に子どもがおらず、両親を含む直系尊属が死亡していた場合で、配偶者X、弟A、妹Bがいたとします。妹Bが被相続人よりも先に死亡していて、妹BにはCという子ども(被相続人からみるとおい・めい)がいた場合を例にして、各相続人の相続割合を説明します。
この場合の相続人は、配偶者X、弟A、おい・めいCの3人になります。相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の割合になり、兄弟姉妹が複数人いる場合には、同じ割合で分けることになるので、以下のようになります。配偶者X:4分の3
弟A:8分の1
おい・めいC:8分の1
② 被相続人に配偶者がいない場合
被相続人に子どもがおらず、両親を含む直系尊属が死亡していた場合で、兄A、弟B、妹Cがいたとします。妹Cが被相続人よりも先に死亡していて、妹CにはDという子ども(被相続人からみるとおい・めい)がいた場合を例にして、各相続人の相続割合を説明します。
この場合の相続人は、兄A、弟B、おい・めいDの3人になります。配偶者がおらず、兄弟姉妹が複数人いる場合は、同じ割合で分けることになるので、相続分は以下のようになります。兄A:3分の1
弟B:3分の1
おい・めいD:3分の1
3、兄弟姉妹の代襲相続における遺留分の考え方
兄弟姉妹の代襲相続が発生した場合、代襲相続人の遺留分はどのようになるのでしょうか。
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(1)遺留分とは
遺留分とは、法律上保障されている最低限の、遺産の取得割合のことをいいます。被相続人がすべての遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言を作成することも法律上は有効とされていますが、そのような内容の遺言であった場合には、遺産をもらうことができなかった相続人との間で不公平な結果となってしまいます。
遺産は、相続人への生活保障という側面もあることから、法律上、遺留分として一定の遺産の取得割合を保障しています。遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使することによって、侵害された遺留分に相当するお金を取り戻すことができます。 -
(2)兄弟姉妹には遺留分はない
法律上、遺留分が保障されている相続人は、以下の範囲となります。
- 配偶者
- 子ども、孫などの直系卑属
- 父母、祖父母などの直系尊属
上記の相続人は、被相続人との関係が近く、被相続人の収入や財産をもとに生活をしていたという側面がありますので、生活保障の観点から遺留分が保障されています。他方、被相続人の兄弟姉妹は、被相続人との関係が遠く、被相続人が亡くなったとしても生活に困ることはないと考えられますので、法律上、遺留分は保障されていません。
兄弟姉妹に代襲相続が発生する場合には、被相続人のおい・めいは、本来の相続人である兄弟姉妹の地位をそのまま承継することになりますので、代襲相続人であるおい・めいにも遺留分はありません。
4、相続でトラブルになった場合の対処法
相続に関してトラブルが生じた場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)兄弟姉妹の相続では相続財産の把握が難しい
兄弟姉妹は、別々に生活していることが多く、兄弟姉妹が亡くなったとしても、どこにどのような財産があるのかまったくわからないということも珍しくありません。相続財産を把握しなければ、遺産分割の手続きを進めていくことができませんので、正確な相続財産調査のためにもまずは弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、遺産に関する手掛かりがほとんどない状態からであっても、被相続人の生活圏の金融機関に照会をかけたり、市区町村役場や法務局から資料を取得したりして、被相続人の相続財産を調べることが可能です。 -
(2)代襲相続人と疎遠であることが多い
兄弟姉妹で代襲相続が発生する場合には、被相続人の兄弟姉妹と被相続人のおい・めいとの間で遺産相続を進めていかなければなりません。しかし、兄弟姉妹とおい・めいとは、疎遠な関係であることが多く、お互いの住所や連絡先などを把握していないこともあります。
遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ有効に成立させることはできませんので、連絡が取れない状態では、遺産分割協議を進めることができません。
弁護士であれば、戸籍の附票などから疎遠である相続人の住所を調べ、相手と連絡を取ることが可能です。専門家である弁護士を間に挟んで話し合いを進めたほうがスムーズに遺産分割協議を進めることができるといえるでしょう。
5、まとめ
被相続人が亡くなる前に被相続人の兄弟姉妹が亡くなっていた場合には、代襲相続によって被相続人のおい・めいが相続することができます。しかし、兄弟姉妹の代襲相続の場合には、再代襲はなく、代襲相続人には遺留分が保障されていないなど、被相続人の子どもの代襲相続とは異なる特殊性があります。
関係性が疎遠になっている兄弟姉妹の代襲相続人との遺産相続は、通常の相続手続きに比べてトラブルが発生する可能性が高くなりますので、早めに専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。遺産相続に関する問題でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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