遺留分侵害額請求は内容証明を使用! 具体的な進め方
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北千住エリアで相続が発生し、遺言書の検認が必要となった場合、東京家庭裁判所で手続きを行うことになります。遺言書の検認を行い、もし、被相続人が特定の相続人にすべての遺産を相続させる旨の遺言書を残していた事実が発覚した場合、他の相続人の遺留分が侵害されてしまうこととなります。
しかし、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行うことによって、侵害された遺留分に相当するお金を取り戻すことが可能です。遺留分侵害額請求には、期間制限がありますので権利を行使する際には内容証明郵便を利用するのが一般的です。
本コラムでは、遺留分侵害額請求の流れと内容証明郵便の作成方法について、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、遺留分侵害額請求の基本的な流れ
遺留分とは、一定の法定相続人に対して保障されている、最低限の相続分のことをいいます。被相続人の意思による生前贈与や遺贈によっても奪われないもので、相続人の生活を保障するための制度となっています。
遺留分が侵害された場合には、自身の遺留分を侵害している他の相続人等に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。では、どのような流れで遺留分侵害額請求をすればよいのでしょうか。以下では、遺留分侵害額請求の基本的な流れについて説明します。
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(1)遺留分が侵害されていることの確認
遺言書によって特定の相続人にすべての遺産が相続されていたり、第三者に遺産の大部分が遺贈されていたりした場合には、他の相続人の遺留分が侵害されます。また、生前に多額の生前贈与がなされていた場合にも、遺留分侵害額請求の対象になることがあります。
そのため、被相続人が死亡した場合には、被相続人による遺言書の有無および遺贈・生前贈与についての調査を行います。 -
(2)相続人調査と相続財産調査
侵害された遺留分の金額を計算するためには、相続人の範囲と相続財産を確定させる必要があります。そこで、遺留分侵害額請求権を行使する前提として、相続人調査と相続財産調査を行います。
なお、遺留分についての権利を主張できる方は、「兄弟姉妹以外の法定相続人」です。具体的には、亡くなられた方の配偶者や子ども(代襲相続人含む)、また、子どもや子どもの代襲相続人がいないときは両親などの直系尊属が対象となります。 -
(3)遺留分侵害額請求権の行使
遺留分が侵害されていることが確認でき、遺留分侵害額の計算もできた段階で、遺留分権利者は、生前贈与または遺贈を受けた人に対して、侵害された遺留分に相当するお金の請求をしていきます。
遺留分侵害額請求権を行使する場合は、後述するように内容証明郵便を利用するのが一般的です。 -
(4)当事者同士の話し合い
遺留分侵害額請求権の行使をした後は、当事者同士の話し合いによって、遺留分権利者に返還すべきお金や返還方法などを決めていきます。当事者同士の話し合いによって合意が成立した場合には、その内容を合意書にまとめておきます。
なお、相続に関する話し合いとしては、他に、遺産分割協議があります。遺産分割協議の場合は、相続人全員が参加して分割方法について話し合い、そこで全員の合意が得られれば、遺留分が侵害される相続人がいる場合でも、有効に成立することになります。 -
(5)遺留分侵害額請求調停
当事者同士の話し合いで解決ができない場合には、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停の申し立てを行います。
申立先となる裁判所は、遺留分を侵害している相手方の住所地にある家庭裁判所か、または当事者同士が合意して決めた家庭裁判所となります。たとえば、相手方が北千住エリアにお住まいの場合、多くのケースで東京地方裁判所へ申し立てることになるでしょう。 -
(6)遺留分侵害額請求訴訟
調停での話し合いがまとまらない場合には調停は不成立となります。調停が不成立になった場合には、遺留分侵害額請求訴訟を提起しなければ結論を出せません。裁判では、遺留分権利者が証拠に基づいて遺留分の侵害があったことを主張立証していかなければなりませんので、弁護士のサポートが不可欠となります。
なお、始めから訴訟を提起するほうが、手間が少ないと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、原則としては、調停を行い、不成立になった場合でなければ、訴訟を提起することはできないという法律上の規定がありますので、まずは調停を申し立てる必要があります。
2、請求できる時間には制限がある! 時効を止める方法
遺留分侵害額請求権には、期間制限があります。時効が来てしまうと、請求する権利そのものを失ってしまうため、早めに権利を行使することが大切です。
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(1)遺留分侵害額請求権の時効とは?
遺留分請求をする権利は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ったときから1年で時効によって消滅します(民法第1048条)。
具体的には、以下の事実をすべて知った時点から時効がスタートします。- 被相続人が亡くなったこと
- 自分が相続人であること
- 遺留分を侵害する内容が記載された遺言書の存在や、遺贈・生前贈与があったこと
もっとも、実際にどの時点で上記事実を知ったのかを立証することが難しい場合もあり、時効直前に権利行使をすると、「知ったとき」がいつであるかをめぐって争いが生じる可能性があることは否定できません。そのため、できる限り、被相続人が亡くなったときから1年以内に遺留分侵害額請求権を行使するのが望ましいでしょう。
なお、遺留分侵害額請求権には、1年の時効以外にも10年の除斥期間というものがあります。遺留分権利者が、上記3つの事実について認識していなかった場合でも、相続が発生してから10年が経過したときには、遺留分侵害額請求の権利が消滅してしまい、権利行使をすることができなくなってしまいますので注意が必要です。 -
(2)時効を止めるには内容証明郵便による権利行使が必要
遺留分侵害額請求権には、1年という非常に短い期間制限があります。したがって、その期間内に権利行使をし、時効の進行を止める必要があることをまずは知っておきましょう。
時効の進行を止めるためには、相手方に対して遺留分侵害額請求権を行使するとの意思表示をする必要があります。原則、意思表示の方法には特に決まりはありません。相手に対して、口頭で「遺留分侵害額請求権を行使します」と意思表示をすることでも足ります。しかし、口頭による意思表示では、後日、「言った・言わない」の問題になってしまいかねません。したがって、書面によって権利行使することが望ましいといえます。
その場合に利用されるのが、内容証明郵便です。内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送付したのかを証明することができる郵便です。配達証明のオプションを追加することによって、相手方に届いた日も証明することができますので、内容証明郵便を利用する際には、配達証明のオプションも利用するようにしましょう。ここまで証明できれば、「言った・言わない」の問題が生じず、また、書面が届いていないという主張も通らないことになるので、遺留分侵害額請求権を行使したことの立証が容易にできるようになります。
3、内容証明郵便の作成方法
ここで、遺留分侵害額請求に限らず、法的権利を請求する場合のさまざまシーン利用される、内容証明郵便の基本な利用方法について説明します。
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(1)内容証明郵便の利用方法
① 利用できる郵便局
内容証明郵便を利用する場合には、郵便局の窓口で利用の申し込みをすることになります。しかし、すべての郵便局で利用することができるわけではありません。
内容証明郵便を利用することができるのは集配郵便局および支社が指定した郵便局に限られます。したがって、あらかじめ、利用する予定の郵便局に確認をしておくとよいでしょう。
② 作成方法
内容証明郵便の利用をする場合には、相手方に送付する文書の原本1部と、原本をコピーした謄本2部の、計3部を作成します。原本は、相手方に送付されますが、謄本については1部が郵便局で保管され、もう1部が差出人に渡されます。このようにして、どのような内容の文書を相手に送ったのかを担保しているのです。
文書を作成する場合には、以下のようなルールがありますので、ルールに従って作成する必要があります。- 縦書きの場合:1行20字以内、1枚26行以内
- 横書きの場合:「1行20字以内、1枚26行以内」、「1行13字以内、1枚40行以内」、「1行26字以内、1枚20行以内」のいずれか
また、内容証明郵便は文書のみを対象とするサービスですので、文書以外の図面、請求書、返信用封筒などを同封することはできません。
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(2)電子内容証明郵便の利用方法
内容証明郵便は、上記のように郵便局の窓口で利用する方法以外にも「電子内容証明(e内容証明)」といって、インターネットを利用して簡単に内容証明郵便を送ることができるサービスもあります。
インターネット環境さえあればいつでも、どこにいても利用することができますので、郵便局に行く余裕がないという方にとっては非常に便利なサービスです。通常の内容証明郵便だと文字数や行数などの細かい制限がありますが、電子内容証明であれば所定のフォーマットを利用する必要があるものの文字数の制限などはありません。また、文書を3通作成しなければならないといった手間もありませんので、利用しやすいほうを選択するとよいでしょう。
4、遺留分侵害額請求は弁護士へ相談するべき
遺留分侵害額請求をお考えの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)迅速な対応によって時効により権利が消滅することを防ぐことができる
遺留分侵害額請求権には、1年という非常に短い期間制限が設けられています。場合によっては、遺言によって遺留分の侵害を知ったとしても、どのように対応すればよいかわからず、時間だけが経過していってしまい、あっという間に1年が経過してしまったという事態になりかねません。
遺留分侵害額請求権を行使するためには、その前提として相続人調査や相続財産調査を行って、侵害されている遺留分の金額を計算する必要があります。時効が成立する前にこれらの調査を終えて、適切に権利行使をするためには、専門家である弁護士のサポートが不可欠といえるでしょう。 -
(2)相手との対応を任せることができる
遺留分侵害額請求権を行使すればそれで終わりというわけではなく、遺留分を侵害している相手方との話し合いによって、侵害されている遺留分相当額の返還を求めていかなければなりません。
しかし、遺留分の計算は、非常に複雑ですので法律の知識がない方では正確な金額を算定することは難しいといえます。また、相手方との交渉も不慣れな方では、どのように進めればよいかわからず、精神的にも大きな負担となるでしょう。
このような場合には弁護士に依頼をすれば、弁護士が代わりに相手方との交渉を行うことができます。相手方が強硬な姿勢を取っている場合であっても、弁護士が代理人として内容証明郵便を送ることによって、遺留分侵害額の支払いに応じてくれるケースも少なくありません。
精神的な負担を少しでも軽減したいという方は、弁護士への依頼をご検討ください。
5、まとめ
遺留分侵害額請求権には、時効がありますので、時効が成立する前に、遺留分侵害額請求権を行使する必要があります。権利行使は、口頭でもできますが、後日トラブルになる可能性がありますので、必ず配達証明付きの内容証明郵便によって行うようにしましょう。
遺言などによって遺留分が侵害されていることが判明した場合には、お早めにベリーベスト法律事務所 北千住オフィスまでご相談ください。
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