代理店契約と販売店契約の違い|契約前にチェックすべき重要事項

2025年12月15日
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代理店契約と販売店契約の違い|契約前にチェックすべき重要事項

令和6年度に東京都足立区に寄せられた法律相談は2509件で、そのうち商工関係の相談は19件でした。

ビジネスを発展させるため、メーカーが製造した商品を販売しようとお考えの経営者や企業担当者もいらっしゃるでしょう。ただ、メーカー商品を販売するにあたり、「代理店契約」か「販売店契約」のどちらを結ぶべきか、悩むかもしれません。両者はメーカーの商品を扱う点で共通していますが、販売方法が異なります。

本記事では、代理店契約と販売店契約の違いや、選択にあたっての判断基準などをベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。

出典:「数字で見る足立 令和7年」(足立区)

1、代理店契約と販売店契約の違い

代理店契約と販売店契約はいずれも、メーカーが製造した商品を他事業者の店舗で販売する内容の契約です。両者を「販売代理店契約」と総称することもあります。

ただし、代理店はメーカーの代理人として商品を販売する一方で、販売店はメーカーから商品を買い取ったうえで、自ら顧客に対して販売するという違いがあります。

  1. (1)代理店契約とは

    「代理店契約」とは、メーカーが代理店に対して商品の代理販売を委託し、代理店がこれを受託してメーカーの商品を代理販売する契約を指すことが一般的です

    代理店契約の場合、商品の売買契約はメーカーと顧客の間で成立します。代理店はあくまでもメーカーの代理人にすぎないため、代理店が売買契約の当事者になることはありません。

  2. (2)販売店契約とは

    「販売店契約」とは、販売店がメーカーから商品を仕入れて、その商品を自ら顧客に対して販売する契約を指すことが一般的です

    販売店契約の場合、まずメーカーが販売店に対して自社商品を売却します。販売店は、メーカーから買い取った商品について、顧客との間で売買契約を締結して売却します。

2、代理店契約と販売店契約は、どのような視点で選択すべきか?

代理店契約と販売店契約では、手数料やリスクなどに違いがあります。それぞれのメリット・デメリットを正しく理解して、自社のニーズに合った契約方法を選択しましょう。

  1. (1)代理店契約のメリット・デメリット

    【店舗側のメリット・デメリット】
    代理店契約のメリットは、商品の在庫を抱える必要がない点です。商品の売れ行きにかかわらず、在庫が残ってしまうことによるコストを負担せずに済みます。
    その一方で、契約によってメーカーから受け取れる利益は、手数料として商品販売の利益の一部にとどまる傾向にあります

    代理店契約は、在庫を抱えない点でローリスクである反面、商品がヒットしても大きなリターンは得にくい契約になっていることが多いです。

    【メーカー側のメリット・デメリット】
    代理店契約を結んだメーカー側は、十分な販売実績が上がれば、大きな利益を得られます。自ら人員を雇用して店舗を設けて販売するより、固定費としてのコストなどをおさえられるメリットがあります。
    その反面、商品が売れるまで利益は確定しません

  2. (2)販売店契約のメリット・デメリット

    【店舗側のメリット】
    販売店契約のメリットは、商品がヒットした際に大きな利益を得られやすい点です
    その一方で、商品が売れ残ると在庫を抱えることになるので、リスクも多く引き受けることになります

    なお、商品が売れ残った際には、メーカーへ商品を返品できる条件を提示される場合もあります。店舗は在庫を抱えるリスクがなくなる一方、メーカーへ追加の手数料を支払うことになるのが一般的です。手数料が高いと、商品ヒット時のリターンが少なくなるため、在庫返品が可能な条件を提示された場合、内容をよく確認しましょう。

    【メーカー側のメリット】
    メーカー側は、販売店に対して商品を譲渡した時点で売り上げが立ち、収益を予測しやすくなります

    その反面、代理店契約と比べると、店舗側がリスクを引き受ける分、利益の配分において店舗側の占めるウェイトが大きくなることが通常です

  3. (3)代理店契約を選択すべきケース

    先述のとおり、代理店契約における代理店は、ローリスク・ローリターンとなるのが一般的です。商品の在庫を抱えることを避けたい場合や、堅実に手数料収入を得たい場合は、代理店契約を選択するとよいでしょう

  4. (4)販売店契約を選択すべきケース

    先述のとおり、販売店契約においては、店舗側は基本的にハイリスク・ハイリターンとなります。商品の売り上げに応じた大きな利益を得たい場合は、販売店契約を選択するとよいでしょう。ただし、契約内容によっては、商品を返品する手数料がかかることもあるため、契約内容を十分に確認しておくことが大切です。

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3、代理店契約・販売店契約を締結する際の留意事項

代理店契約または販売店契約を締結する際には、以下の各点に注意して契約条件をチェックしましょう。

  1. (1)販売店契約の場合、再販売価格の拘束は独占禁止法違反

    代理店契約の場合、顧客に対する商品の販売価格は、売り主であるメーカーが決定します。

    これに対して販売店契約の場合は、店舗側が自ら顧客に対して商品を販売するため、販売価格も店舗によって決定することが可能です。メーカーが店舗に対して、顧客に対する商品の販売価格を指定すること(=再販売価格の拘束)は法に抵触してきます(独占禁止法第2条第9号第4号)。

    メーカー側から再販売価格の拘束を受けた場合、メーカーは公正取引委員会による排除措置命令の対象となる可能性があります

  2. (2)販売する地域の範囲(代理店契約・販売店契約の両方)

    代理店契約・販売店契約のどちらにおいても、代理店・販売店が商品を販売できる地域の範囲を明確に定める必要があります。

    基本的には、メーカーが販促効果などを分析したうえで、各代理店・販売店による販売地域を定めるのが一般的です。代理店・販売店側としては、販売地域があまりにも狭いと、営業の自由度が低くなります。定められた地域が狭い場合、販売地域を広げるようにメーカー側と交渉してみましょう

  3. (3)販売権は独占的か、非独占的か(代理店契約・販売店契約の両方)

    代理店契約・販売店契約のどちらでも、メーカー側は、一定範囲の地域における商品販売権をいくつの代理店・販売店に認めるか決める権利があります。メーカー側が販路拡大を重視する場合、対象地域内の複数店舗に販売権を認める非独占的な契約で、複数の代理店・販売店に販売を委託することが多いでしょう。

    一方、メーカーがひとつの代理店・販売店に対して独占的販売権を付与する場合、代理店・販売店の販売に対するモチベーション向上を狙っている可能性もあります。

    代理店・販売店は、他社との競争を避けられる独占的販売権を得るほうが有利となります。独占的販売権を希望する場合は、メーカー側と交渉しましょう

  4. (4)収益に直結する事項|手数料・売れ残り・最低購入数量など(代理店契約・販売店契約の両方)

    代理店契約・販売店契約のどちらでも、以下の条件が代理店・販売店とメーカー双方の収益に直結するものとして重要です。

    ・手数料
    代理店契約では、メーカーが代理店に対して支払う手数料の計算方法を定めます。メーカーは代理店に対し、売約実績に比例した額の手数料を支払うのが一般的ですが、売れ行きが悪い場合に代理店が手数料を受け取れないリスクを回避するため、メーカーが最低手数料額を設けるケースもあります。

    ・売れ残った商品の返品
    販売店契約では、売れ残った商品を販売店がメーカーに返品できるかどうかを定めることがあります。販売店は一切返品が認められない、一定の割合まで返品が認められる、100%返品が認められるなど、さまざまなパターンが考えられます。

    ・最低購入数量
    メーカー側が、代理店・販売店側の販売ノルマ(最低購入数量)を設けるかどうかも重要なポイントのひとつです。売り上げが販売ノルマに満たない場合、不足分は代理店・販売店側が補填(ほてん)しなければなりません。そのため、販売ノルマが重ければ重いほど、代理店・販売店側にとっては不利になります


    上記の各条件が許容できる内容になっているかどうかをチェックしましょう。

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4、代理店契約・販売店契約前に弁護士へレビューを依頼すべき理由

代理店契約書または販売店契約書(販売代理店契約書)を締結する際には、草案の時点で問題がないか、弁護士へ相談することをおすすめします

弁護士は、代理店・販売店が注意すべき契約上のリスクを指摘するとともに、不適切な条項があれば修正案を具体的に提示します。弁護士のチェックを受けることで、予期せぬ契約トラブルによって損失を被るリスクを回避できる可能性が高まります。

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5、まとめ

代理店契約では、代理店が間に入って販促を行い、メーカーが売り主として顧客に商品を販売します。これに対して販売店契約では、販売店がメーカーから商品を買い取り、その商品を自ら顧客に対して販売します。

代理店契約と販売店契約には、上記の違いに伴い、互いに異なるメリットとデメリットがあります。代理店・販売店は、自社のニーズに合った契約形態を選択しましょう。

ベリーベスト法律事務所は、代理店契約書や販売契約書などのチェックにかんするご相談を随時受け付けております。代理店契約や販売店契約における不安や疑問点は、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています