両親の離婚後、別居した親の介護義務は子どもにもあるのか?
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東京都足立区が公表する「あだちの介護保険」によると、足立区の要介護・要支援認定者数は、東京23区のうち世田谷区に次いで2番目に多い3万7176人でした。
法律上、親子には扶養義務が存在するため、親が介護を必要とする状態になった場合には子は何らかの対応をしなければなりません。通常、両親が離婚すると子どもは父か母かのどちらか片方に引き取られて、もう片方の親とは別居することになります。
しかし、別居して生きているとしても、血のつながった親子であることには変わりません。そのため、子どもがいる状態で離婚を検討されている方は、「自分が子どもの親権を取得して子どもを引き取った場合にも、将来に配偶者が介護を必要とする状態になったら、子どもには介護をする義務が生じるのか」という点に不安を抱くこともあるでしょう。
本コラムでは、子どもの親に対する介護義務や、子どもが親を介護したくないときの対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、両親の離婚後、別居した親を介護する義務はあるのか?
まず、「両親の離婚が別居している親に介護が必要となった場合、子どもにはその別居親を介護する義務はあるのか」という点から解説します。
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(1)親子には扶養義務がある
両親が離婚して一方の親と子どもが別居したとしても、親子であることは変わらないため、子どもは別居した親を介護するなど扶養義務があります。(民法第877条第1項)
そのため、次のような親であったとしても、子どもは、扶養義務から当然には免れることはできません。- 親権がなく子どもの面倒をみてこなかった
- 養育費を支払ったことがない
- 再婚して別の子どもがいる
- 子どもはその親と会ったことがない
ただし、扶養義務があっても実際には扶養しなくてもよい場合があります。
扶養義務の内容や扶養の順位については後述します。 -
(2)直系血族でなければ扶養義務はない
介護するなど扶養義務があるのは、原則として直系血族と兄弟姉妹同士に限られています。(民法第877条第1項)
「直系血族」には父子や母子が含まれますが、血のつながった父母であっても法律上の父子や母子でないのなら、扶養義務は発生しません。
たとえば、結婚していない両親の間に生まれて父から認知されていない子ども(認知されていない非嫡出子)は、法律上の父子関係がないため、子どもは生みの親である父を介護するなどの扶養義務を負わないのです。
また、再婚相手と連れ子など血のつながりがない親子関係も、養子縁組をしない限りは法律上の親子関係がないため、扶養義務は発生しません。 -
(3)子どもの親に対する扶養義務の内容
子どもが親に対して負う扶養義務の内容は、お金を送るなど「金銭扶養」のほか、同居したり介護したりすることで身上の面倒をみる扶養があります。
一般に介護義務と呼ばれているのは、後者の、面倒をみる扶養のことです。
また、扶養義務の程度は「自分の生活を犠牲にしない範囲で、親の最低限の生活を扶ける程度」とされています。
そのため、介護を必要とする親がいたとしても「働いて自分の生活を維持することに精いっぱいだから介護など扶養する余裕がない」といった場合にまで介護などの扶養義務を履行することは要求されていないのです。
2、扶養義務の順位
介護を必要とする親の子どもや兄弟姉妹が2人以上いれば、誰が扶養するかといった扶養の順位が問題になります。
そのため、介護が必要な親の再婚相手との子どもや兄弟姉妹がいるときは、必ずしも扶養義務の履行として介護をしなければならないわけではありません。
また、誰が扶養するかは、当事者間の話し合い(協議)で決めるのが原則です。
話し合いで結果が出ないときや話し合いすらできないときには、家庭裁判所が決めるものとされています。(民法第878条)
ただし、一般的には介護が必要な親の兄弟姉妹より、直系血族である子どものほうが扶養者として優先されることに注意してください。
このような場合に扶養義務を履行できないときには、扶養する余裕がないことを家庭裁判所に主張する必要があります。
3、親の介護をしたくないときの対処法
以下では、子どもが「親の介護をしたくない」と望んだときに取ることができる対応を解説します。
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(1)介護施設に入れる
介護施設へ入所してもらえば、子どもが親を実際に介護する必要はありません。
入所には入居一時金などのお金がかかることも多いですが、基本的には親の財産からまかなうことにあります。
もし本人が入所を嫌がったとしても、在宅で利用できる介護サービスもあるので、まずは利用を検討してみましょう。 -
(2)他の親族にお願いする
介護を必要とする親に他の親族がいる場合には「他の親族に介護をしてもらえないか」とお願いをする、という方法もあります。
また、介護だけでなく、金銭的な援助を求めることもできます。
さらに、金銭的援助があれば在宅介護サービスの利用料金に充てることができるため、子どもの介護負担を抑えられます。
もし他の直系血族や兄弟姉妹に介護や金銭援助を拒否された場合は、家庭裁判所に扶養請求調停を申し立てることも可能です。
調停でも話し合いがまとまらなかった場合は、審判に移行して、家庭裁判所が判断してくれます。
4、両親が離婚した場合、子どもの相続権はどうなる?
親子の間には扶養義務があるだけでなく、子には親の財産を相続する権利があります。
以下では、両親が離婚すると子どもの相続権はどうなるのかについて解説します。
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(1)離婚しても子どもの相続権は残る
両親が離婚したとしても、子どもの相続権は残ります。
前述のとおり親が離婚したり再婚したりしても、親子であることは変わりないためです。
子の相続権を定めた民法第877条第1項は、「被相続人の子は、相続人となる」としています。
子どもがその親と会ったことがなく、その親が再婚していて別の子どもがいたとしても、親子関係がある限り子どもの相続権には影響しません。
ただし、次のような行為をした場合には、相続人の欠格または廃除の対象となり、その親について子どもは相続権を持たない可能性があります。- 子どもが親を死亡に至らせようとした(民法第891条)
- 子どもがその親の遺言について詐欺や強迫をした(民法第891条)
- 子どもがその親の遺言書を偽造や破棄をした(民法第891条)
- 子どもがその親に虐待や重大な侮辱などをした(民法第892条)
上記の行為の大半は犯罪にあたるものであり、相続権がなくなるという問題以前に、決して行うべきではありません。
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(2)相続を放棄することは可能
通常は親子関係がある限り子どもの相続権はありますが、相続の開始(死亡)があったことを知った時点から3か月以内に家庭裁判所に申述することによって、相続を放棄することができます。
例えば、以下のような場合には、相続放棄を検討するべきと言えます。- その親に借金がありそう
- 活用が難しい不動産を相続したくない
- その親と疎遠でほとんど他人だから相続をしたくない
- 再婚相手や再婚相手との子など相続人と関わりたくない
相続を放棄すると遺産分割協議などに参加する必要はなくなりますが、その親に借金がない場合や借金を補って余りある財産を持っていた場合には、本来は多くの財産を受け取れたという場合にも受け取れなくってしまいます。
そのため、相続放棄をするかどうかは、慎重に判断する必要があるのです。
5、まとめ
両親が離婚して一方の親と子どもが別居したとしても、親子であることは変わりません。そのため、その親が養育費を支払ったことがないなど子どもの面倒をみたことがなく、そもそも子どもは親の顔を知らないといった場合にも、子どもには別居した親を介護するなど扶養義務があります。(民法第877条第1項)
もっとも、介護が必要になったとしても、子どもに介護する経済的な余裕がない場合などにまで介護などの扶養義務を履行することは要求されません。
経済的な余裕がある場合にも、介護施設などを利用することができます。
また、介護が必要な親に再婚相手や再婚相手との子どもや兄弟姉妹がいるときは、その人たちに介護を任せられる可能性があります。
つまり、子は親に対する扶養義務を負いますが、必ずしも介護をしなければならないと決まっているわけでもないのです。
離婚をする際には、現在の夫婦間の問題だけでなく、今後の子どもの養育や子どもの進路、そして将来に子どもが負う扶養義務の問題など、幅広い問題について長期的な視野に基づいて検討や判断を行う必要があります。
そのため、ご自身だけで判断するのではなく、専門家である弁護士に相談して、アドバイスを受けながら考えることをおすすめします。
離婚を検討されている方や離婚に際して悩みや不安を抱かれている方は、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
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