離婚時の財産分与で通帳開示請求! するべき範囲や拒否された場合の対処法

2024年10月31日
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離婚時の財産分与で通帳開示請求! するべき範囲や拒否された場合の対処法

足立区が公表している統計資料によると、令和5年度の足立区の離婚届受理件数は1613件で、1日当たり4.4件の離婚届が受理されました。

離婚をする際には、財産分与によって夫婦の財産を清算することになります。財産の清算にあたっては、夫婦全体の財産を把握する必要があるため、自分名義の財産のみでなく、相手名義の財産状況も整理しなければなりません。きちんと財産を分けるためには、お互いに財産を開示し合わなければいけませんが、任意に財産の開示をしない相手に対しては、法的対応が必要になってくることもあるのです。

今回は、離婚時の財産分与で通帳開示請求をする方法と拒否された場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。


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1、通帳開示請求とは? 離婚時に行う範囲

通帳開示請求とはどのような手続きなのでしょうか。以下では、通帳開示請求に関する基本的事項について説明します。

  1. (1)どのようなときにするのか

    離婚時には、財産分与によって夫婦が婚姻期間中に築いた財産を分けることになります。財産分与では、夫婦の共有財産を基本的には2分の1の割合で分けていくことになりますが、そのためには、夫婦がお互いの名義で保有している財産を開示し合うことが必要です。

    相手の財産をすべて把握していればよいですが、正確に把握しているケースは少ないでしょう。そのため、財産分与を行う前提としてお互いの財産を洗い出さなければなりません。特に、相手の預貯金については、預貯金通帳を確認しなければその金額がわからないので、離婚時の財産分与の前提として通帳開示請求を行っていくことになります。

  2. (2)どのような手続きなのか

    「通帳開示請求」というと、法律上の特別な手続きのように思われますが、法律上そのような手続きが存在しているわけではありません。

    簡単にいえば、相手に対して「持っている通帳をすべて開示してほしい」と要求することが通帳開示請求です。ただし、通帳開示請求は、法律上の手続きではないので、相手に開示を求めたとしても、相手が開示を拒否することもあり、またすべての通帳を開示してくれるとは限りません

    そのため、相手が通帳開示請求を拒否することが予想される場合には、別居する前に、相手の通帳のコピーをとっておくか、後述するような弁護士会照会や調査嘱託の制度を利用することも検討するとよいでしょう。

2、通帳開示請求をするべき範囲|財産分与の基本

通帳開示請求をする場合には、どの範囲で開示を求めればよいのでしょうか。以下では、財産分与の基本と通帳開示請求の内容・範囲について説明します。

  1. (1)財産分与の対象財産

    財産分与は、婚姻期間中に夫婦がお互いに協力して築いた財産を清算する制度です。そのため、財産分与の対象となる財産も夫婦の協力によって維持・形成してきた財産の部分になります。このような財産を「共有財産」といいます。

    これに対して、独身時代の預貯金や親から相続した遺産などは、夫婦の協力とは無関係に築かれた財産ですので、財産分与の対象にはなりません。このような財産のことを「特有財産」といいます。

  2. (2)通帳開示請求の内容と範囲

    通帳開示請求は、財産分与の前提として行うものなので、通帳開示請求で開示する範囲も当然、共有財産の部分になります。そして、夫婦の協力関係は、婚姻時からはじまり、別居しているのであれば別居時まで、別居していない場合は離婚時まで続いているので、通帳開示請求をする場合には、婚姻時の預貯金残高がわかる部分と別居時または離婚時の預貯金残高がわかる部分を明らかにしてもらいます

    たとえば、婚姻時に預貯金残高が100万円あり、別居時に預貯金残高が300万円になっていたという場合には、夫婦の共有財産に該当する部分は、別居時の預貯金残高から婚姻時の預貯金残高を控除した部分である200万円になります。

    もっとも、婚姻後に親から相続した財産が当該預貯金口座に入金されたという場合には、その部分を除いて考える必要がある場合もあります。また、別居前に不正に金銭が引き出されていた、という事情等があれば、引き出しの事実を特定する必要があります。そのため、このようなケースでは、婚姻後から別居時までのすべての出入金がわかる部分の開示を求める必要があるのです。

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3、通帳開示請求を拒否された場合

通帳開示請求は任意に行うものなので、相手方がそれに応じる義務はなく、通帳開示を拒否することもあります。そのような場合には、以下のような対処法が必要になってきます。

  1. (1)弁護士会照会

    弁護士会照会とは、弁護士が弁護士会を通じて、公務所または公私の団体に対して照会を行い、必要な報告を求める手続きのことです(弁護士法23条の2第1項、第2項)。

    弁護士が依頼を受けた事件の処理にあたって、必要となる証拠を集めるための手続きであるため、弁護士への依頼が前提になりますが、裁判外の手続きなので、時期を問わずいつでも利用することができるというメリットがあります。照会をかけるには、金融機関の名称等を特定しておく必要があります。

    しかし、弁護士会照会を受けた照会先に課されるのは一般的な回答義務にすぎないので、回答を拒否する正当な事由がある場合には、回答を拒否される可能性もあります。離婚協議中の財産開示を目的とした場合、弁護士会照会をしたとしても、相手の預貯金の残高や取引履歴の開示に応じない金融機関もあるので注意が必要です。

  2. (2)裁判所による調査嘱託

    裁判所による調査嘱託とは、裁判所が公私の団体に対して、必要な調査の嘱託を行い、回答を求める手続きのことです(家事事件手続法62条)。

    裁判所を通じた手続きになるので、弁護士会照会では回答に応じなかった金融機関であっても調査嘱託であれば回答に応じることがあります。相手が開示を拒否していたとしても、調査嘱託をすることによって、相手の通帳開示を実現することが可能になるでしょう。

    ただし、調査嘱託をする際には、金融機関の名称と支店名を明らかにして、金融機関を特定したうえで行う必要があるので、「どこかの銀行に預金があるはずだ」という漠然とした情報だけでは調査嘱託を利用することはできません。

4、離婚時の財産分与等は弁護士へ相談を

離婚時の財産分与などの問題は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)弁護士会照会や調査嘱託などによって財産を明らかにできる

    通帳開示請求は、当事者同士でも行うことができます。しかし、相手方が少しでも多くの財産を自分の手元に残しておきたいと考える場合には、通帳開示請求を受けたとしても素直に開示に応じてくれないことがあります。そのため、相手が財産開示に協力をしてくれないケースでは、当事者同士で行う通帳開示請求には限界があります。

    しかし、弁護士であれば、相手方が通帳開示に協力をしてくれないという場合であっても、弁護士会照会によって相手の財産を明らかにすることを選択肢として検討できます。また、離婚調停(財産分与請求調停)や離婚裁判になっているケースなど、裁判所がすでに介入している場合には、より確実な裁判所の調査嘱託を利用することによって、相手の財産を明らかにすることが可能です

    このように、弁護士に依頼をすることによって、相手の財産を明らかにできる可能性が高くなるので、少しでも多くの財産をもらいたいという場合には、弁護士への依頼を検討しましょう。

  2. (2)離婚の交渉を任せることができる

    離婚は、基本的には夫婦の合意によって行う手続きになるので、離婚をするためには、夫婦で話し合いを進めていかなければなりません。しかし、離婚をするような状態になった夫婦は、お互いに顔を合わせて話し合いをすること自体が困難であることも少なくありません。また、当事者同士で話し合いをするとお互いに感情的になってしまい、スムーズに話し合いを進めることが難しいこともあります。

    このような場合には、弁護士に依頼をすることをおすすめします。弁護士に依頼をすることによって、弁護士が代理人として相手方との交渉を担当するので、直接相手方と交渉をするストレスから解放されます。また、離婚の交渉には知識や経験が必要となりますが、専門家である弁護士であれば安心して任せることができるといえるでしょう。

  3. (3)適切な離婚条件で離婚をすることができる

    離婚をする際には、財産分与以外にも、親権、養育費、婚姻費用、慰謝料、面会交流、年金分割などさまざまな離婚条件を定めなければなりません。当事者だけでは、すべての離婚条件を適切に定めることが難しいといえますので、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
    不利な条件で離婚をしてしまうと、離婚後の生活で思わぬ不利益を被るおそれもあるので、離婚の手続きは弁護士に任せることをおすすめします。

5、まとめ

財産分与をする際には、相手方に対して通帳開示請求をしていくことになりますが、開示に応じてくれないこともあります。そのような場合には、弁護士に依頼をして、弁護士会照会や裁判所の調査嘱託によって、相手方配偶者の財産を明らかにしていくとよいでしょう。

財産分与をはじめとした離婚に関するお悩みは、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています