共働きなのに何もしない旦那と離婚!? 知っておくべき注意点
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厚生労働省の公表によると、2022年における共働き世帯は専業主婦世帯の約2.2倍となっています。しかし、夫婦で仕事をしていながら、家事の負担が女性だけに偏るケースも、いまだ珍しくありません。
育児や家事に非協力的で何もしてくれない旦那だと、徐々に不満がたまっていき、離婚を考えることもあるでしょう。しかし、そもそも旦那が何もしないという理由だけで離婚することができるのでしょうか。また、離婚を進める際にはどのような点に注意する必要があるのでしょうか。
今回は、共働きなのに何もしない旦那と離婚する方法と注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、共働きなのに何もしない旦那と離婚できる?
そもそも、共働きなのに旦那が何もしないという理由だけで離婚することができるのでしょうか。
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(1)話し合いで合意すれば離婚できる
共働きなのに家事や育児などをせず、何もしない旦那であれば、離婚を考える妻は少なくないでしょう。このような場合、お互いの話し合いで合意をすれば離婚することができます。このような方法を「協議離婚」といいます。
協議離婚では、離婚理由を問われることはありませんので、たとえ「共働きなのに何もしない旦那」という理由であっても、双方が離婚に合意すれば、離婚は成立します。
協議離婚の際は、親権や養育費、財産分与などについて取り決めしておくことが重要です。取り決めの交渉について不安がある場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。 -
(2)旦那が合意してくれないときは離婚調停の申立てを検討
旦那が離婚に応じてくれないときは、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行う、というのがもう一つ有効な手段として存在します。
離婚調停は、2名の調停委員が夫婦の間に入って、離婚に関する紛争の解決を図る制度です。離婚調停であれば、夫婦が顔を合わせて話し合いをする必要がなく、公正中立な第三者が間に入ることで、感情的にならないスムーズな話し合いが期待できます。
ただし、離婚調停も、あくまでも話し合いの手続きですので、旦那が離婚に応じてくれないときは調停不成立となります。このような場合において、離婚を拒否する相手と離婚をするためには、離婚裁判の手続きが必要になります。
2、裁判で離婚が認められる法定離婚事由とは
協議離婚および調停離婚が成立しない場合は、最終的に離婚訴訟を提起することになります。裁判では、どのような場合に離婚が認められるのでしょうか。
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(1)裁判離婚では法定離婚事由に該当するかがポイント
裁判離婚は、以下の法定離婚事由(民法770条1項)に該当するかで離婚の可否が決められます。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
離婚裁判では、当事者からの主張立証を踏まえて、裁判官が法定離婚事由の有無を判断し、離婚の可否を決定します。
そのため、裁判離婚をするためには、法定離婚事由に該当する事情があるかどうかが重要なポイントとなります。 -
(2)「何もしない」だけでは離婚が認められない可能性が高い
では、旦那が何もしないという理由は、法定離婚事由に該当するのでしょうか。該当し得る事由としては、「悪意の遺棄」および「その他婚姻を継続し難い重大な事由」がありますので、以下で詳しく検討していきます。
① 悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由なく民法で定められている同居・協力・扶助という夫婦の基本的な義務に違反することをいいます。
悪意の遺棄に該当する代表的なケースとしては、以下のものが挙げられます。- 結婚したのに一度も同居しようとしない
- 収入があるにもかかわらず生活費を渡さない
- 健康なのに働こうとしない
育児や家事に協力しないという事情は、協力義務に違反することになりますが、悪意の遺棄といえるためには、単に「遺棄」したことの認識があるにとどまらず、社会的にも非難されるに値する要素を含むことが必要です。
旦那が何もしないということだけでは、そこまでの要素があったと判断するのは難しいため、悪意の遺棄を理由に離婚をするのは困難といえます。
② その他婚姻を継続し難い重大な事由
その他婚姻を継続し難い重大な事由とは、婚姻中の一切の事情から婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態に至っていることをいいます。
その他婚姻を継続し難い重大な事由に該当する代表的なケースとしては、以下のものが挙げられます。- 一定期間の別居
- 身体的な暴力(DV)
- 配偶者による犯罪行為や服役
- 過度な宗教活動
- 性的不能、性交拒否、性的異常
旦那が育児や家事に非協力的で何もしてくれず、協力を求めても暴言を吐かれたり、暴力を振るったりするなどの状況があれば、その他婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
しかし、そのような状況に至らず、単に旦那が何もしてくれないという理由だけでは、法定離婚事由に該当せず、離婚が認められない可能性が高いといえます。
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3、何もしない旦那との離婚で慰謝料請求や財産分与はどうなる?
何もしない旦那と離婚する場合、慰謝料や財産分与はどうなるのでしょうか。
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(1)何もしない旦那から慰謝料はもらえる?
旦那が何もしないという理由だけでは、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」(民法709条)とまではいえませんので、慰謝料を請求するのは難しいでしょう。
離婚時に相手に対して慰謝料を請求するには、他人の行為によって損害(精神的苦痛)を被ったという事情が必要になります。
たとえば、何もしない旦那による悪意の遺棄があったケースやDVがあったケースなどであれば、旦那の行為によって損害(精神的苦痛)を被ったことが認められ、慰謝料を請求できる可能性があります。その場合には、慰謝料を請求する妻の側で旦那の行為を立証していかなければなりませんので、あらかじめ証拠を集めておくことが大切です。 -
(2)何もしない旦那との財産分与はどうなる?
財産分与とは、婚姻期間中の夫婦の共有財産を離婚時に清算する制度(民法768条3項)です。婚姻期間中の夫婦の財産形成に対する貢献度は、基本的には等しいと考えられていますので、財産分与の割合は、原則として2分の1となります。
他方で、夫婦の財産形成に対する貢献度に偏りがあるという場合には、そのような事情を主張立証することで、2分の1とは異なる割合で財産分与をすることがあります。
しかし、そのような割合での分与が認められるケースは、夫の収入が1億を超えている場合など、非常にまれなケースです。旦那の家事に対する貢献度が低いというだけでは、妻に有利な割合で財産分与がなされることは通常ありません。
4、離婚する前の準備と知っておくべきこと
以下では、離婚する前に準備すべきことと知っておくべきことを説明します。
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(1)子どもがいれば養育費や面会交流について話し合わなければならない
夫婦に子どもがいる場合、離婚だけでなく子どもの親権、養育費、面会交流について話し合わなければなりません。何もしない旦那には子どもを任せられない、という場合には、親権獲得に向けてしっかりと準備していくことが大切です。
また、親権を獲得し子どもと一緒に生活する場合、旦那に対して、養育費を請求することができます。養育費の金額はお互いの話し合いで決めることができますが、裁判所が公表している養育費算定表を利用すればスムーズに取り決めることが可能です。
なお、子どもと離れて暮らす旦那から面会交流の要求があった場合、基本的には拒否することはできません。子どもにとって最善の選択をするためにも、しっかりと交渉しましょう。 -
(2)別居を検討する
共働きなのに何もしない旦那と離婚を検討しているのであれば、別居するのもひとつの手段です。
離婚を前提に別居をすれば、普段の生活で相手と顔を合わせる必要がありませんので、これまでのストレスの多い生活から解放されます。また、離婚前から別居をしていれば、離婚後に慌てて新居を探す必要がありませんので、離婚後の負担も軽減されるでしょう。
なお、別居期間は、法定離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」の考慮要素のひとつになりますので、別居期間が長期間になれば裁判離婚が認められる可能性も高くなります。 -
(3)慰謝料請求できるかどうか弁護士に相談する
共働きなのに何もしない旦那に対して、慰謝料を請求できるかどうかは、旦那の行為によって損害(精神的苦痛)を被ったといえる事情があるかどうかがポイントになります。
そのような事情の有無は、法的観点から判断する必要がありますので、法的知識や経験に乏しい一般の方では正確に判断するのが困難といえます。そのため、旦那に対する慰謝料請求をお考えの方は、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士であれば、慰謝料を請求できるどうかを、具体的な事情に基づいて正確に判断します。また、今後の離婚手続きについてもアドバイスを得ることができますので、離婚にあたって不安がある場合は、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
5、まとめ
共働きなのに旦那が何もしないという理由だけでは、裁判離婚が認められる可能性は低いです。しかし、何らかの別の事情によって、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)があると認められれば離婚が成立する可能性があります。
離婚にあたっては、離婚の可否以外にも慰謝料、財産分与、親権、養育費、面会交流など決めなければならない事項がたくさんありますので、離婚トラブルの解決実績がある弁護士のサポートが不可欠といえます。
共働きなのに何もしない旦那との離婚をお考えの方は、まずはベリーベスト法律事務所 北千住オフィスまでお気軽にご相談ください。
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