上から目線で説教してくる「マンスプレイニング夫」と離婚する方法

2024年03月12日
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上から目線で説教してくる「マンスプレイニング夫」と離婚する方法

令和3年、足立区では1546件の離婚届出は提出がされました。

離婚に至る要因には、浮気や暴力、ギャンブルでの借金や浪費など、さまざまなものがあります。そして、「いつも夫に上から目線で説教されることで多大なストレスを感じている」という理由から離婚したいと希望する女性もいるでしょう。

近年では、男性による上から目線の説教は「マンスプレイニング」として問題視されています。本コラムでは、マンスプレイニングが離婚理由となるのかどうかについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。

1、男性による上から目線の説教は「マンスプレイニング」

まず、「マンスプレイニング」について、言葉の由来や意味を解説します。

  1. (1)マンスプレイニングの由来

    マンスプレイニングは「man(男性)」と「explaining(説明する)」という単語を掛け合わせた造語です。

    アメリカ人の作家レベッカ・ソルニットが平成20年(2008)に発表したエッセイ「Men who explain things(説教したがる男たち)」がきっかけとなって、欧米や英語圏で使用されるようになりました。
    平成22年にはニューヨーク・タイムズの「ワード・オブ・ザ・イヤー」に「マンスプレイナー」という言葉となって選ばれています。
    また、平成26年からはオックスフォード英語辞典にも「mansplaining」が掲載されるようになりました。

    日本でも、平成30年(2018)にソルニットの著書『説教したがる男たち』の邦訳が出版されたことなどをきっかけにして、主にインターネットやSNS上で「マンスプレイニング」という言葉が使用されるようになっています。

  2. (2)マンスプレイニングの意味

    マンスプレイニングという言葉は、単に「男性が何かについて説明をする」という意味で用いられているわけではありません。
    マンスプレイニングには、「男性が相手を無知だと見下しながら偉そうにアドバイスや説教をする」という意味が込められています

    たとえば、日本では最近、「ソロキャンプ」といって、ひとりで楽しむキャンプが話題になっています。
    しかし、ソロキャンプの楽しさが話題になる一方で、ソロキャンプをする女性に「どうせ女性だから知識がないだろう?こうしたらいいよ」と上から目線でわざわざアドバイスをしにくる男性の存在が問題視されることもありました。
    また、スーパーの惣菜コーナーでポテトサラダを手に取ろうとした幼児連れの女性が「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と高齢男性に話しかけられていた様子を目撃した女性が、その様子をSNSに投稿したことから、「ポテサラ事件」として話題になったこともあります。
    これらは、男性が女性に対して上から目線で一方的にアドバイスをする「マンスプレイニング」の典型的な例といえます。

    人に説明をすることやアドバイスをすること自体は悪いわけではありません。
    しかし、「女性だからこんなこと知らないだろう」「女性より男性のほうが上だ」という性差別的な発想のもとに相手を見下す言動をして、相手を傷付けたり相手に嫌な思いをさせたりすることは問題になります。
    なお、ソルニットは、このようなマンスプレイニングを行う男性の言動について「自意識過剰と無知が合わさった心理からきている」と述べています。

2、夫のマンスプレイニングは離婚の理由になるか?

夫婦生活をしている中で夫からマンスプレイニングを受けている場合、それを理由に離婚することはできるのでしょうか?

以下では、離婚が成立するために法律で定められている離婚原因や、マンスプレイニングが離婚理由になるのかどうかについて解説します。

  1. (1)法定離婚原因

    原則として、夫婦で話し合って離婚を決める場合には、夫婦間で合意が成立するならどんな理由でも離婚することができます。
    しかし、裁判で離婚を成立させたい場合には、「離婚原因」が必要になります。

    民法770条には、離婚が法的に認められる原因が五つ定められています。
    具体的には、以下のとおりです。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 配偶者の生死が3年以上不明
    • 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由


    基本的に、これら離婚原因のどれかに当てはまる場合には、裁判所に離婚を認めてもらえることになります。

  2. (2)マンスプレイニングは離婚理由になるか?

    「配偶者から説教をされて不快である」というだけでは、上記の法定離婚原因のいずれにも当てはまりません。
    しかし、夫からのマンスプレイニングの程度がひどい場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまる可能性があります。

    「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する主な事情としては、以下のようなものがあります。

    • 性格の不一致
    • DVやモラハラ
    • 家事や育児への不参加
    • 配偶者の親族との不和
    • 過度な宗教活動
    • ギャンブル
    • 性的不一致
    • 犯罪による服役


    これらのうち、マンスプレイニングは「モラハラ」にも当てはまる可能性があります。
    「モラハラ」とは「モラルハラスメント」の略称であり、倫理や道徳に反したいやがらせのことを指します。
    具体的には、暴言を吐いたり、学歴や職業について見下したり、自分の価値観の押し付けをしたりするような言動が、モラハラに該当します。
    そして、上から目線の説教である「マンスプレイニング」が、度を越えた暴言やDVに発展した場合には、法廷の離婚原因に該当する可能性があります

    具体的には「女なのに掃除も満足にできないのか!もっとしっかり掃除しろ!」「この料理はなんだ!俺の満足する料理も作れないのか!もっとうまい料理が作れるように勉強しろ!」というような暴言を夫から繰り返し行われている場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し離婚原因となる可能性があります。

3、離婚の方法や手続きの流れ

離婚をする方法には裁判のほかにも「協議」「調停」「審判」があります。
以下では、夫と離婚するための手続きの流れを解説します。

  1. (1)夫婦間での話し合い

    離婚をしたい場合にまず行うのが「夫婦間での話し合い」です。
    ここで合意に至れば、その時点で離婚を成立させることが可能です。

    なお、親権や養育費、財産分与や慰謝料などに取り決めについては、通常の契約書ではなく「公正証書」にしておくことも手段の一つです。
    公正証書とは、公証役場で公証人によって作成される公文書のことです。
    公正証書は、一定の条件を満たすと、裁判所の下す判決文と同様に、強制執行を行うことができるようになります(民事執行法22条5号)。
    そのため、特に、養育費について取り決めをした場合には、後で相手方が養育費を支払わなかったときに備えて、公正証書を作成するメリットがあります。

    その他にも、公正証書は、当事者双方が公証役場に出頭し、公証人という第三者を介して作成する必要があります。公証人という第三者の前でした約束は、当事者のみで交わされた約束よりも、事実上約束を破りづらいという点もメリットです。

  2. (2)調停

    夫婦間の話し合いが決裂した場合には、「調停」に進みます。
    調停とは、家庭裁判所に対して申し立てを行い、調停委員と裁判官という第三者と共に話し合いで紛争を解決する制度です。
    裁判所を利用するといっても、あくまでも話し合いでの解決を目的としているため、裁判官が離婚の成立・不成立の判決を下すことはありません。

    調停では調停委員からアドバイスをもらうことできます。
    また、相手と直接顔を合わせずに話し合いを行うことも可能です。
    もし調停によって離婚の合意が成立した場合は裁判所に「調停調書」を作成してもらいます。
    「調停調書」は判決と同じ効力を持ちます(家事事件手続法268条1項、民事執行法22条7号)。

  3. (3)審判

    婚姻費用や財産分与等、特定の事項を対象とする調停が不成立となった場合には、自動的に「審判」に移行します。
    提出された資料や当事者の意見、その他の事情を考慮した裁判官によって判断が下されます。

    審判で婚姻費用の金額が決定すると、裁判官によって公文書である「審判書」が作成されます。

4、夫と離婚するつもりなら弁護士に相談

離婚問題はトラブルになりやすく、決めなければいけないことも多岐にわたります。
相手に離婚を同意してもらえない場合もあれば、「話し合いはしたいが直接に顔を合わせたくはない」という場合もあるでしょう。
弁護士に相談すれば、相手への対応や交渉、調停・審判に進んだ場合の手続きなどを任せることができます。

離婚交渉、あるいは調停や審判で離婚を成立するためには、証拠の確保も重要です。
マンスプレイニングによる離婚についても、夫がマンスプレイニングを行っている事実やその程度のひどさを示す証拠、またはマンスプレイニングによって妻が受けているストレスなどを示す証拠を確保する必要があります。

弁護士であれば、「どのような証拠をどのように確保すればよいか」といった点についても、具体的にアドバイスすることができます。

また、離婚をすることについては合意しても、離婚後の取り決めについて揉める場合もあります。
この点についても、弁護士から法律に基づいたアドバイスを受けることで、自分に不利な離婚条件になってしまうことを防ぐことができます。

5、まとめ

「マンスプレイニング」とは、男性が相手を見下しながら偉そうに説教やアドバイスをする行為です。
単に説教をするだけでは裁判などで離婚が認められる可能性は低いですが、度を越えた暴言やDVと判断されるほどひどいマンスプレイニングを繰り返しされている場合は離婚が認められる可能性があります
そのためには、モラハラの事実や程度を示す証拠を確保してくることが重要になります。

マンスプレイニングをしてくる夫との離婚を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。
離婚の方法や離婚条件、マンスプレイニングが法定離婚事由に該当するかどうかの判断や証拠を確保する方法など、弁護士が多岐にわたるアドバイスやサポートを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています