不眠症は離婚事由になる? 離婚の同意を得られない場合の対処法も解説

2024年03月05日
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不眠症は離婚事由になる? 離婚の同意を得られない場合の対処法も解説

令和3年度の東京都足立区役所がする法律相談のうち、離婚に関する相談は362件でした。

配偶者が不眠症などの精神的な疾患を抱えている場合、同居することにストレスを感じて、離婚したいと考える場合もあるでしょう。

本記事では、不眠症の配偶者と離婚したい場合の手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。

1、配偶者の不眠症を理由に離婚できるのか?

不眠症の配偶者と離婚できるかどうかは、離婚手続きの種類によって異なります。
協議離婚または調停離婚であれば、夫婦が合意すれば離婚することができます。
他方で、裁判離婚の場合には、法定離婚事由がなければ離婚が認められません。

  1. (1)協議離婚・調停離婚の場合|合意すれば離婚できる

    協議離婚とは、夫婦が話し合って離婚することです。
    調停離婚とは、離婚調停を通じて離婚することをいいます。
    離婚調停では、調停委員の仲介によって離婚条件等を話し合い、合意すれば調停によって離婚が成立します。

    協議離婚と調停離婚は、夫婦の合意によって離婚を成立させる手続きです。
    夫婦の意思を尊重する観点から、協議離婚と調停離婚については、離婚の理由は問われません。

    したがって、配偶者の不眠症が原因となっている場合でも、夫婦が合意すれば離婚を成立させることができます

  2. (2)裁判離婚の場合|法定離婚事由が必要

    裁判離婚は、離婚裁判(離婚訴訟)を通じて離婚することをいいます。
    配偶者が離婚に同意しない場合でも、離婚を認める判決が確定すれば、離婚を成立させることが可能です。

    裁判離婚が認められるためには、以下のいずれかの法定離婚事由が存在することが必要になります(民法第770条第1項)。

    1. ① 不貞行為
    2. ② 悪意の遺棄
    3. ③ 3年以上の生死不明
    4. ④ 強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
    5. ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由


    配偶者の不眠症が原因で裁判離婚を目指す場合にも、上記いずれかの法定離婚事由を、訴訟において立証する必要があるのです。

2、不眠症は法定離婚事由に当たるのか?

裁判離婚を目指すとしても、「不眠症である」というだけでは、法定離婚事由が認められない可能性が高いといます。
ただし、不眠症が原因で配偶者にひどい問題行動が見られる場合は、法定離婚事由が認められる可能性があります。

  1. (1)問題行動がひどい場合のみ、法定離婚事由に当たり得る

    「不眠症である」というだけでは、法定離婚事由に当たるとまでは評価できません。
    不眠症に陥っている人は相当数に上ると思われるところ、多くの方は標準的な生活を送ることができており、周囲との関係性が必ずしも悪いとはいえないためです。

    しかし、不眠症が原因でひどい問題行動が見られる場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たり、裁判離婚が認められる可能性があります

  2. (2)不眠症が原因で法定離婚事由が認められる場合の例

    たとえば、不眠症が原因で配偶者に以下のような問題行動が見られる場合には、法定離婚事由が認められる可能性が高いといえます。

    • 暴力を振るう
    • 口汚い侮辱をする
    • 全く仕事をせず、生活費を分担しない


3、配偶者が離婚に同意しない場合の対処法

以下では、不眠症の配偶者が離婚に同意しない場合にとれる対処法を解説します。

  1. (1)カウンセリングを受けさせる

    不眠症は、医師などの専門家によるカウンセリングを受けることで改善する場合があります。

    不眠症の症状が改善すれば、配偶者の問題行動は収まるかもしれません。
    「配偶者が不眠症から立ち直るなら、結婚生活をやり直したい」という気持ちがあるならば、カウンセリングを勧めることを検討してください。

  2. (2)別居する

    不眠症の配偶者と暮らすことがつらい場合には、別居することも考えられます。

    配偶者と別居すれば、つらい状況からご自身を守ることにつながります。
    また、別居期間が数年以上に及べば、婚姻関係が破綻したものとして、裁判離婚が認められる可能性も高まります。

    なお、夫婦は互いに同居義務を負うため(民法第752条)、別居する際には配偶者の同意を得ることが望ましいです。
    ただし、配偶者から暴力や重大な侮辱を受けているなど、一刻も早く別居して逃げる必要がある場合は、配偶者の同意を得ることなく別居しても同居義務には違反しません。

  3. (3)弁護士に相談する

    不眠症の配偶者とどうしても離婚したい場合は、弁護士に相談してください。

    弁護士は、協議離婚・調停離婚・裁判離婚に関する対応を代理して、適正な条件による離婚の成立を目指してサポートすることができます。

4、不眠症の配偶者と離婚する手続きの流れ

以下では、協議離婚・調停離婚・裁判離婚のそれぞれについて、手続きの流れを解説します。

  1. (1)協議離婚の流れ

    協議離婚の手続きは、配偶者に対して離婚を切り出すところから始まります。
    「なぜ離婚したいのか」ということを具体的に伝えて、説得を試みましょう。

    また、以下のような離婚条件についても取り決めを行う必要があります。

    • 財産分与、年金分割
    • 慰謝料
    • 婚姻費用

    (子どもがいる場合)
    • 親権
    • 養育費
    • 面会交流の方法


    離婚することおよび離婚条件に合意できたら、合意内容をまとめた書面(離婚協議書)を締結しましょう。
    離婚協議書は、公正証書によって作成することをおすすめします。
    公正証書であれば、原本が公証役場で保管されるほか、財産分与や養育費などが不払いとなった場合には裁判所に対して直ちに強制執行を申し立てることができます。

    その後、市区町村役場に離婚届を提出すれば、協議離婚成立となります。

  2. (2)調停離婚の流れ

    協議離婚の話し合いがまとまらない場合は、調停離婚を目指すことになります。

    調停離婚を目指すに当たっては、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
    また、原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所が申立先になります。

    離婚調停では、調停委員が夫婦双方の主張を公平に聴き取り、離婚条件等について歩み寄りを促して合意を目指します。
    調停期日では、調停委員との30分程度の面談が2回ずつ、計2時間程度行われるのが一般的です。
    離婚調停の中で合意が成立したら、離婚条件等をまとめた調停調書が作成されて、その内容に基づいて離婚が成立します。

    調停離婚が成立した場合には、成立日を含めて10日以内に、申立人が市区町村役場へ離婚届を提出する必要があります。

  3. (3)裁判離婚の流れ

    離婚調停が不成立となった場合において、引き続き離婚を求めるときは、裁判離婚を目指すことになります。

    裁判離婚の手続きは、裁判所に対して訴状を提出することで始まります。
    訴状には、法定離婚事由を基礎づける根拠事実や、求める離婚条件とその根拠などを記載しなければなりません。
    また、必要に応じて、証拠書類やその他の主張書面(準備書面)を提出する必要があります。

    離婚訴訟は原則として公開で行われ、一般の方でも傍聴可能です。
    原告(離婚を求める側)は、証拠に基づいて法定離婚事由の存在を立証し、被告(離婚を求められる側)は原告の主張に対して反論します。

    裁判所は、法定離婚事由が存在すると認定した場合に限り、離婚を成立させる判決を言い渡します。
    この場合、判決主文において離婚条件が示されます。

    離婚判決が確定すると、裁判離婚が成立します。
    調停離婚の場合と同様に、成立日を含めて10日以内に、原告が市区町村役場へ離婚届を提出しなければなりません。

5、まとめ

配偶者の不眠症が原因で大きなストレスを感じている場合、離婚を検討されることもあるでしょう。
もし「離婚すべきだ」という結論に至った場合は、協議離婚・調停離婚・裁判離婚のいずれかを目指すことになります。
協議離婚と調停離婚は理由を問われませんが、裁判離婚については法定離婚事由が必要となります。
不眠症というだけでは法定離婚事由が認められない可能性は高いですが、不眠症を原因として夫婦間に起こっている問題の種類によっては、法定離婚事由が認められる可能性もあります

ベリーベスト法律事務所では、離婚に関するご相談を随時受け付けております。
配偶者との離婚を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています