配偶者からの離婚の連絡を無視するとどうなる? 連絡への対応方法
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令和4年に東京都足立区に寄せられた法律相談は2411件で、そのうち離婚に関するものは379件でした。
配偶者やその代理人の弁護士から、内容証明郵便などのかたちで離婚に関する連絡が来た場合、無視していると離婚調停や離婚訴訟に発展する可能性があります。不本意なかたちで離婚手続きを進められてしまわないよう、もし相手方の弁護士から連絡が来たら、ご自身も法律事務所に連絡して弁護士に相談してください。
本コラムでは、配偶者からの離婚連絡を無視するとどうなるか、離婚の連絡を受けた場合の対応や離婚時に検討すべき事項などについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、配偶者や弁護士からの離婚連絡を無視するとどうなる?
配偶者やその代理人である弁護士から「離婚したい」という旨の連絡を受けた場合、返事をせずに放置するべきではありません。
放置し続けていると離婚調停が申し立てられたり離婚訴訟が提起されたりして、配偶者が離婚手続きの主導権を握る可能性が高いためです。
とくに、ご自身が不在のまま離婚訴訟が進められると、配偶者の主張に対して反論を行う機会が失われてしまいます。
裁判所としても、配偶者の主張のみを根拠として判決を行うことになるため、ご自身にとって不利な条件による離婚が成立してしまう可能性が高くなります。
配偶者や弁護士から離婚の連絡を受けたら、離婚に関して、ご自身の意思を明確に表明すべきです。
離婚したくない場合と離婚してもよい場合で対応は異なりますが、いずれにしても無視することはせず、ご自身でも弁護士に相談しながら対応するようにしましょう。
2、離婚したい旨の連絡が来た場合にとるべき対応
配偶者や弁護士から離婚したい旨の連絡を受けた場合、とるべき対応は、離婚したくない場合と離婚してもよい場合とで異なります。
どちらの場合でも、弁護士に相談しながら対応方針を検討したうえで、無視せずに常識的な期間内に回答することが大切です。
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(1)離婚したくない場合の対応
離婚したくない場合は、まずは「離婚を拒否する」という旨を明確に配偶者へ伝えましょう。
そのうえで、「関係修復に向けた話し合いを提案する」「もうしばらく別居して様子を見ることを提案する」などの対応が考えられます。
離婚を拒否した場合、配偶者は離婚調停を申し立てる可能性が高いといえます。
離婚調停は、調停委員を介して話し合いを行う手続きです。
調停においても引き続き離婚を拒否することはできますが、その場合には離婚訴訟を提起される可能性があります。
そして、離婚訴訟で以下のいずれかの法定離婚事由(民法第770条第1項)が認められると、ご自身が離婚を拒否していても、判決によって強制的に離婚が成立してしまうのです。- ① 不貞行為
- ② 悪意の遺棄
- ③ 3年以上の生死不明
- ④ 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
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(2)離婚してもよい場合の対応
離婚してもよい場合には、配偶者にその旨を伝えたうえで、離婚協議を試みましょう。
離婚協議では、さまざまな離婚条件について話し合いを行うことになります。
離婚協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。
離婚調停は、夫婦のどちらが申し立てることもできますが、申立先は原則として相手方の住所地の家庭裁判所となります。
ただし、夫婦の合意があれば、別の家庭裁判所に離婚調停を申し立てることも可能です。遠隔地で別居している場合には、中間地の家庭裁判所への申し立てを合意することも検討しましょう。
もし離婚調停が不成立となった場合には、離婚訴訟を提起することになります。
離婚の可否自体を争わない場合には、訴訟では離婚条件についてのみ争います。
夫婦間で意見が食い違う点について、互いに主張を戦わせることになるのです。
離婚そのものについては合意できている場合でも、離婚条件については激しく争う、という場合も多々あります。
適正な条件による離婚を成立させるためにも、訴訟になった際には弁護士を代理人として対応しましょう。
お問い合わせください。
3、配偶者と離婚する際に検討すべきこと
配偶者と離婚する場合は、主に以下の離婚条件について事前に検討しておいてください。
- ① 財産分与・年金分割
- ② 慰謝料
- ③ 婚姻費用
- ④ 子どもに関する事項|親権・養育費・面会交流
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(1)財産分与・年金分割
夫婦が離婚する際には、共有財産の財産分与を行います(民法第768条、第771条)。
夫婦のいずれかが婚姻中に取得した財産は、原則として財産分与の対象です(民法第762条第2項)。
ただし、相続や贈与によって取得したなど、自己の名で得た財産については婚姻中に取得したものでも財産分与の対象外となります(同条第1項)。
財産分与を適正な条件で行うためには、対象財産を互いに開示し合うことが必要不可欠です。
配偶者が財産を隠していると疑われる場合には、弁護士に調査を依頼してください。
また、財産分与に類するものとして、婚姻期間中における厚生年金保険の加入記録についても分割を請求できます。これを「年金分割」といいます。
年金分割の割合は、離婚協議・離婚調停・離婚訴訟を通じて決めるのが原則です(「合意分割」)。
ただし、婚姻期間中に国民年金の第3号被保険者の期間がある方は、日本年金機構に対して単独で年金分割を請求できます(「3号分割」)。 -
(2)慰謝料
夫婦のいずれか一方が離婚の原因を作った場合、相手方は離婚慰謝料を請求できます。
たとえば、配偶者に対して以下のような行為をした場合です。- 不貞行為
- DV
- モラハラ
- 無断での別居
また、離婚の原因となった行為が悪質な場合や、夫婦間に未成熟の子どもがいる場合などには、離婚慰謝料が増額される可能性が高くなります。
離婚手続きを始める前に、配偶者に対して慰謝料を請求できるのか、それとも反対に慰謝料を支払う義務を負うのか、金額はどの程度であるかなどについて事前に検討しておきましょう。 -
(3)婚姻費用
離婚成立前に別居期間がある場合には、離婚成立前であっても別居期間中の婚姻費用(生活費など)を請求できますし、支払われていない期間があれば離婚時に精算することもあります。
精算すべき婚姻費用の金額は、以下のような要素に応じて決まります。- 別居期間における夫婦の収入バランス
- 別居期間中に同居する子どもの有無、人数、年齢
基本的には、収入の多い側から少ない側へ、または子どもと同居していない側から同居している側へ、婚姻費用が支払われることになります。
婚姻費用の金額を算定する際には、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を参考にすることができます。
配偶者と別居している場合には、慰謝料の場合と同じように、婚姻費用の金額やどちらが支払うかについて、事前から検討しておきましょう。 -
(4)子どもに関する事項|親権・養育費・面会交流
夫婦間に子どもがいる場合には、子どもに関する以下の事項を検討しておく必要があります。
- ① 親権
離婚時には、子どもの親権者を父母のいずれか一方とする必要があります。
親権者は話し合いで決めるのが原則ですが、話し合いがまとまらなければ、最終的には離婚訴訟で親権者が決まります。
離婚訴訟では、監護状況・生活状況や子どもの意思などが考慮され、子どもの利益の観点から親権者が決定されます。 - ② 養育費
離婚後に子どもと同居しない親は、子どもに対する扶養義務(民法第877条第1項)の一環として、子どもと同居する親に養育費を支払う義務を負います。
養育費の金額を算定する際には、裁判所が公表している「養育費算定表」を参考にすることができます。 - ③ 面会交流
離婚後に子どもと同居しない親が、子どもと会って交流する際のルールについても、離婚時に取り決めておくべきです。
面会交流の頻度・内容・子どもの受け渡し方法・連絡手段などについて、トラブルや疑義が生じないように明確に合意しておきましょう。
- ① 親権
4、離婚問題を弁護士に相談するメリット
配偶者から離婚を請求された場合には、弁護士を代理人として対応することをおすすめします。
以下では、離婚問題を弁護士に相談することのメリットを解説します。
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(1)適正な離婚条件がわかる|法的根拠に基づいて主張可能
弁護士であれば、依頼者の具体的な事情をふまえたうえで、裁判例や実務に照らした適正な離婚条件の水準についてアドバイスすることができます。
適正な離婚条件がわかることにより、配偶者の主張が合理的なものであるか、それとも理不尽なものであるかを判断することができるでしょう。
また、弁護士のサポートを受ければ、ご自身の希望する離婚条件を実現するための、法的な根拠に基づいた主張を組み立てることもできます。
法律をふまえた説得力のある主張を行うことで、有利な条件による離婚が成立する可能性を高められます。 -
(2)離婚手続きを一任できる
弁護士には、協議離婚・調停離婚・裁判離婚のいずれの手続きについても依頼することができます。
弁護士に離婚手続きの対応を一任することで、相手との交渉に伴う精神的な負担が軽減されます。
また、離婚訴訟の手続きには専門的な知識が必要となりますが、弁護士に依頼することで戸惑うことなく対処することができるようになるでしょう。
負担を抑えながらスムーズに離婚を成立させたい場合には、お早めに弁護士に相談してください。
5、まとめ
配偶者から離婚に関する連絡を受けた場合、無視して対応せずにいると、配偶者主導で離婚手続きが進められてしまいます。
反論の機会を確保するためにも、弁護士の相談したうえで、適切に返答しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、離婚に関するご相談を随時受け付けております。
配偶者から離婚の連絡を受けた方や、離婚手続きへの対応にお悩みの方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています