養育費の増額請求は拒否できる? 増額が認められるケース
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裁判所が公表している司法統計によると、令和5年に東京家庭裁判所に新たに申し立てのあった養育費請求調停の件数は、1447件です。この統計には、単純な養育費の請求事案だけではなく、養育費の減額や増額の事案も含まれていますので、一定数の方が養育費の増額に関して争っていることが予想されます。
離婚時に養育費の取り決めをしたとしても、その後の状況の変化によって、監護親から養育費の増額を求められることがあります。経済的に余裕があれば応じることができるかもしれませんが、そうでない場合などには増額請求を拒否したいと考える方も多いでしょう。そもそも、養育費の増額を拒否できるのでしょうか。
今回は、養育費の増額を拒否できるケースについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそも養育費の増額や減額は可能?
そもそも一度取り決めた養育費の金額を増額または減額することはできるのでしょうか。
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(1)同意があれば養育費の増額・減額は可能
養育費の金額については、離婚時または離婚後にお互いの話し合いによって決めることになります。お互いが納得していればどのような金額であっても問題ありませんが、裁判所が公表している養育費算定表を利用して相場となる金額を把握することが多いといえます。
養育費算定表は、お互いの収入と子どもの人数および子どもの年齢によって、相場となる養育費の金額を導き出すことができるツールであり、裁判所の実務においても利用されているものです。
このように定められた養育費の金額については、養育費を支払う側と受け取る側がそれぞれ同意しているのであれば、取り決め済みの養育費の金額を増額することも、減額することもできます。 -
(2)同意がなくても養育費増額の可能性があるケースとは?
子どもが幼いときに離婚をする場合、養育費の支払いが長期間に及ぶことになります。支払期間が長くなればなるほど、お互いの生活状況や経済状況に変化が生じることになるでしょう。そのため、当初の養育費の金額では足りなくなってしまうということもあります。
このように、養育費について合意をした時点では予測することができなかった事情の変化が生じ、養育費の増額をしなければ不公平な状況になった場合には、養育費を増額することが認められています。
養育費の増額ができる可能性のあるケースとしては、以下のケースが挙げられます。- 養育費を支払う側の収入が大幅に増えた
- 養育費を受け取る側の収入が大幅に減った
- 子どもの進学などによって教育費が増えた
実際に増額ができるかどうかは、具体的な事情によりますが、このようなケースに該当する場合には、相手から養育費の見直しを求められることがあるでしょう。
2、増額請求を拒否することはできる?
養育費の増額請求をされた場合には、それを拒否することができるのでしょうか。
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(1)話し合いであれば拒否することも可能
相手から養育費の増額を求められたとしても、基本的には、双方の同意がなければ養育費の増額はできません。したがって、養育費の増額に応じたくないという場合には、増額を拒否することもできます。
しかし、不誠実な態度で養育費の増額を拒否していると、相手から養育費増額を求める調停や審判の申し立てをされてしまうおそれがあります。そのため、相手から、養育費を増額してほしいと求められた場合には、増額に応じられない事情を丁寧に説明して相手の納得を得るように心がけましょう。 -
(2)養育費の増額請求を拒否できるケースとは?
前述のとおり、養育費について相手から増額を求める調停や審判の申し立てをされることがあります。調停や審判になった場合には、養育費を決定した当時に予測できない事情変更によって養育費の増額を認めることが公平であるかどうかが審理されます。さらに、養育費の増額を認めるべき事情の変更があったとしても、同時に減額を認めるべき事情がある場合には、それらをふまえて判断されます。つまり、ただ単に必要だからとか、生活が成り立たないからといった理由のみによる養育費増額請求は、調停や審判になったとしても認められる可能性は低いといえます。
調停や審判において、養育費の増額を拒否できるのは、以下のようなケースが挙げられます。- 養育費の増額を認めるべき事情の変更がない場合
- 事情の変更があったとしても養育費を決定した当時にこれを予測できた場合
- 減額を認めるべき事情(義務者の収入減少・扶養家族の変動、権利者の収入増加など)があり、養育費の増額が公平とはいえない場合
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3、養育費の見直しを請求される流れ
相手から養育費の見直しを請求された場合には、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
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(1)話し合いによる養育費の増額請求
まずは、当事者同士の話し合いによって、増額をするかどうか、いくら増額するかなどを決めていくことになります。養育費の増額請求をされた場合、どのような経緯、理由で養育費の増額を求めているのかを確認するようにしましょう。そのうえで、養育費の増額に応じられない場合には、収入や生活状況などを説明して相手の納得を得るように努める必要があります。
他方、養育費の増額に納得できた場合には、相手との口頭での合意だけで終わらせるのではなく、必ず書面を作成するようにしましょう。なお、相手から公正証書の作成を求められることもありますが、公正証書にすると、万が一養育費の支払いを滞納した場合に、裁判をすることなく財産を差し押さえられることは理解しておく必要があります。 -
(2)養育費増額調停
当事者同士の話し合いで養育費の増額について合意に至らなかった場合には、相手から、養育費増額請求調停が申し立てられるでしょう。調停では、裁判官や調停委員が間に入って、養育費の増額に関する話し合いが進められていき、合意が成立すれば調停は終了となります。
実際の調停では、裁判所が公表している養育費算定表が用いられますので、現在の双方の収入や子どもの人数・年齢に応じた、養育費の金額の相場が示されるでしょう。当初、取り決めた養育費の金額と養育費算定表から導かれる相場の金額との間に大きな差があるような場合には、調停委員から養育費の増額に応じるよう求められることもあります。 -
(3)養育費増額審判
調停は基本的には話し合いの手続きになりますので、お互いの合意が得られなかった場合、調停は成立せず、自動的に次の手続きである審判に移行します。
審判は、裁判に近い手続きですので、調停のように当事者の話し合いで養育費の金額を決めるのではなく、裁判官が一方的に判断します。そのため、裁判官が養育費の増額をするべきだと判断した場合、適当と考えられる金額が決定され、増額した養育費の支払いを命じる審判が言い渡されることになります。
なお、審判でも調停と同様に裁判所が公表している養育算定表が用いられます。そのため、審判で言い渡されると考えられる金額についてはある程度の予想を立てることが可能です。
4、離婚や養育費についてのトラブルは弁護士へ
離婚や養育費に関するトラブルでお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)養育費の増額を拒否することができるか判断してもらえる
相手から養育費の増額を求められたとしても、養育費の増額を正当化する事情がなければ、増額請求を拒否できます。どのような事情があれば拒否できるのかについては、ケース・バイ・ケースですので、ご自身のケースが増額請求を拒否できるのかは、専門家である弁護士に判断をしてもらう必要があります。
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(2)相手との交渉や対応を任せることができる
養育費の増額を求められた場合、まずは、相手との話し合いによって増額をするかどうかを決めていくことになります。離婚後の当事者の関係性によっては、相手と顔を合わせて話し合いをしたくないということもありますが、そのような場合には弁護士に対応をお任せください。
弁護士であれば本人に代わって相手との交渉を行うことができますので、不慣れな交渉に時間を割く必要もありません。また、養育費の増額を拒否する場合にも、弁護士から相手に説明をしたほうが相手の納得が得られやすいといえるでしょう。 -
(3)離婚時から弁護士のサポートを受けることがおすすめ
離婚時には、離婚をするかどうかだけではなく、親権、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流などさまざまな条件を決める必要があります。当事者だけでこれらの条件の取り決めをしてしまうと、内容が曖昧であったり、必要な条項が設けられていなかったりすることで将来トラブルが生じるおそれがあります。
そのようなトラブルを回避するためには、離婚時から弁護士のサポートを受けることがおすすめです。適正な離婚条件で離婚をするためにも、離婚を検討中の方は、まずは、弁護士にご相談ください。
5、まとめ
毎月しっかりと養育費を支払っていても、突然、相手から養育費の増額を求められることがあります。養育費の増額に応じるかどうかは、養育費の合意をした時点からの、状況の変化などを見極めたうえで対応を決めていく必要があります。
また、養育費の増額を拒否する場合には、しっかりと事情を伝えて相手が納得するように交渉していかなければなりません。しかし、話し合いをどのように進めればよいのか、有利に進めるにはどうすればよいのかわからないこともあるでしょう。そのような場合でも、弁護士なら本人に代わって交渉することができますし、調停や審判になった場合の手続きなどもスムーズに進めることができます。
養育費の増額を拒否できるかどうかの判断にお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています