養育費請求調停が不成立にならないために、とるべき対策とポイント
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裁判所が公開している司法統計によると、令和2年の東京家庭裁判所における養育費請求調停の申立件数は、1391件ありました。多くの方が養育費の支払いに関するトラブルを抱えて、裁判所に調停の申し立てをしていることがわかります。
養育費に関する取り決めするにあたり、当事者同士の話し合いで解決することができないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。もっとも、調停も当事者同士の話し合いが基本となる手続きのため、お互いが合意できなければ不成立になる可能性もあります。
今回は、養育費の調停が不成立になった場合の対応や、不成立にならないためにできることなどについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費請求調停の手続き方法と流れ
養育費請求調停とは、どのような手続きなのでしょうか。まずは、養育費請求調停の概要について、確認していきましょう。
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(1)養育費請求調停とは
養育費について、当事者同士で話し合いができない場合やまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて、養育費の支払いについて取り決めることができます。これを「養育費請求調停」といいます。
養育請求調停は、主に離婚後に養育費の取り決めをするような場合や、養育費の増減を求める際に利用される調停です。
そのため、養育費について争いがあり離婚がまとまらないというような場合には、養育費請求調停ではなく「離婚調停(夫婦関係調整調停)」を申し立て、そのなかで養育費について取り決めていくことになります。 -
(2)養育費請求調停の手続き方法
養育費請求調停を申し立てるには、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所に必要書類を提出する必要があります。
【提出が必要な書類】
- 養育費請求調停の申立書
- 子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)
- 収入に関する資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書、課税証明書などの写し)
また、子ども1人につき1200円分の収入印紙と、連絡用の郵便切手を裁判所に納める必要があります。ご自身で調停の申し立て手続きをすることに不安がある場合には、弁護士に相談をするとよいでしょう。
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(3)養育費請求調停の申し立て後の流れ
養育費請求調停の申し立てをした後は、次のような流れで進行します。
① 調停期日の指定
養育費請求調停の申し立てが受理されると、家庭裁判所が第1回調停期日を指定します。相手方には、裁判所から申立書などの書類一式と調停期日呼出状が送られます。
② 第1回調停期日
申立人と相手方は、裁判所によって指定された日時に裁判所に行き、調停期日に出席します。
調停期日では、調停委員2名が当事者の話を交互に聞きながら、話し合いを進めていきます。基本的には、それぞれ個別に調停委員と話すことになるため、当事者が直接顔を合わせて話し合いをする必要はありません。
第1回調停期日で話し合いがまとまらなければ、2回目以降の調停期日が指定されます。
③ 第2回以降の調停期日
第1回調停期日と同様に話し合いが進められることになります。
2回目以降は、問題となっている点がクリアになるように話し合いを進めていきます。たとえば、1回目の調停期日で養育費を算定するための資料が足りなかったという場合には、2回目以降の調停で提出し、具体的な養育費の金額を算定したうえで話し合いを進めます。
養育費の金額や支払い方法・時期などについて当事者間で合意が得られた場合には、調停成立となります。当事者が合意した内容については、調停調書という書面に記載されます。
2、調停が不成立となるケース
前述したように、調停はあくまでも話し合いにより解決を図る手続きです。そのため、調停を申し立てれば、必ず争いが解決するというわけではありません。
調停が不成立になるのは、どのような場合に多いのか、具体的なケースをみていきましょう。
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(1)相手方が調停を欠席している
第1回調停期日は、相手方の都合を確認することなく日程が決められるので、相手方の都合によっては第1回調停期日に出席することができないこともあります。このような場合には、当事者の都合を確認したうえで、2回目以降の調停期日が指定されるので、第1回調停期日を欠席したからといって、直ちに調停が不成立になるわけではありません。
しかし、2回目以降の調停期日も正当な理由なく欠席した場合には、話し合いによる解決が不可能であるとして調停が不成立になる可能性があります。 -
(2)話し合いがまとまらない
当事者が調停期日に出席していたとしても、双方の希望する養育費の金額や支払い条件に大きな隔たりがあり、合意が得られる見込みがないという場合、調停は不成立になります。
また、養育費の算定にあたって必要となる収入資料を当事者が提出しないような場合には、養育費の金額を定めることができません。このようなケースでも、調停は不成立になるでしょう。
双方の考え方に隔たりがある場合、調停委員が譲歩を求めるなど説得が繰り返されることになるので、複数回調停期日を重ねることになります。
3、調停が不成立になったときはどうなる?
養育費請求調停が不成立になってしまった場合には、どのように養育費を定めることになるのでしょうか。
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(1)自動的に審判に移行
養育費請求調停が不成立になった場合には、当事者からの特別な手続きを要することなく自動的に「審判」という手続きに移行します。
審判では、当事者から提出された資料や調停での話し合いの経緯などを踏まえて、裁判官が養育費に関する事項を決定します。調停が当事者の話し合いによって解決する手続きですが、審判は裁判官が結論を下すという点が大きく異なります。
つまり、調停が不成立になった場合でも、最終的には必ず結論が出されることになります。
なお、審判の内容に納得ができない場合には、「即時抗告」という不服申し立てをすることができます。即時抗告は、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に行う必要があります。 -
(2)そもそも調停成立の見込みがない場合
離婚すること自体に争いがある場合には、「調停前置主義」という制度が適用されますので、調停手続きを経ていなければ裁判を起こすことができません。
しかし、すでに離婚が成立しており、養育費のみに関する事項について争いがある場合は、調停前置主義は適用されません。そのため、調停を申し立てずに、すぐに審判を申し立てることもできます。相手方が話し合いに応じる意向がないことが明らかであるような場合には、調停を申し立てたとしても時間の無駄になってしまうので、最初から審判の申し立てをすることを検討しましょう。
ただし、審判の申し立てをしたとしても、裁判所の判断によって調停手続きにまわされる可能性があります。審判を申し立てれば必ず審判が行われるというわけではないので、注意が必要です。
ご自身のケースが調停と審判のどちらが適しているか判断できないという場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
4、調停を成立させるためのポイント
養育費請求調停が不成立にならないようにするために、押さえておくとよいポイントがあります。
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(1)養育費の相場を把握する
養育費を請求する側としては、少しでも多くの養育費をもらいたいと考えるでしょう。
しかし、養育費請求調停では、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」を参考に養育費が算定され、その金額が話し合いのベースになります。ベース金額から大きく懸け離れた金額を主張していても、話し合いがまとまる見込みは低いでしょう。
そのため、まずは養育費の算定表を利用して、養育費の相場を把握することが大切です。
養育費の算定表は、ご自身の収入と相手方の収入、子どもの人数・年齢がわかれば簡単に金額を算定することができます。
なお、ベリーベスト法律事務所では、養育費の目安を簡単に計算できる『養育費計算ツール』をご用意しております。無料で、簡単に養育費のベースとなる金額を算定することができるので、ぜひご利用ください。養育費計算ツールは、こちらからご利用いただけます→『養育費計算ツール』 -
(2)一定の譲歩をすることも検討する
お互いが自分の希望する条件に固執していては、話し合いがまとまる見込みはありません。調停を成立させたいと考えるのであれば、一定の譲歩も必要になります。
もっとも、譲歩をするというのは相手の主張する条件をすべてのむというわけではありません。ご自身にも譲れない条件があると思いますので、希望する条件に優先順位をつけて話し合いを進めるようにしましょう。優先順位が低い条件については、譲歩しつつ、逆に優先順位の高い条件については、相手方に譲歩してもらうなどの工夫が必要です。
その点、弁護士にご依頼いただければ、少しでも希望に沿った形で調停が成立するようにサポートすることが可能です。調停に同席することもできるので、不安を感じている方は弁護士に依頼をすることをおすすめします。
5、まとめ
養育費請求調停は、あくまでも話し合いにより解決を目指す手続きのため、当事者間に合意させようとする意志がない場合には、調停は不成立になってしまいます。調停の成立を目指すのであれば、優先順位をつけたうえで、状況に応じて柔軟に対応することが大切です。
養育費は、子どもの成長のため、将来のためにも必要不可欠なお金です。
養育費請求調停が不成立になるのではと不安を抱えている方はもちろんのこと、養育費で折り合いがつかないなどの問題を抱えている方は、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスまでお気軽にご相談ください。
北千住オフィスでは、お客さまのご状況に適した最善な解決策をご提示できるよう、しっかりとお話を伺うことを大切に考えております。おひとりで悩みを抱えず、まずはお問い合わせください。
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