不貞行為の事実を片方が認めないときの対処法と慰謝料請求
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- 不貞行為
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足立区が公表している資料によると、足立区の令和5年度の離婚届受理件数は1622件でした。離婚に踏み切るきっかけはさまざまですが、配偶者による不貞行為が発覚した場合、離婚を検討する方は多いでしょう。
配偶者または不倫相手の片方が不貞行為を認めているにもかかわらず、もう片方が不貞行為を認めないことがあります。不貞行為の事実を片方が認めなかったとしても、不貞行為を立証できる十分な証拠があれば、不貞行為を否定する相手に対しても慰謝料請求をすることができる可能性があります。
本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・「不貞行為」とはどういったことを指すのか
・不貞行為の事実を、片方が認めない場合の慰謝料請求や必要な証拠
・離婚する場合、事前に考えておくべきこと
配偶者の不貞行為は事実であるのに、配偶者もしくは不倫相手の片方が不貞行為を認めず悩んでいる方に向けて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、不貞行為の定義とは
そもそも不貞行為とはどのようなものなのでしょうか。以下では、不貞行為に関する基本事項について説明します。
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(1)不貞行為の定義
不貞行為とは、配偶者以外の異性と自分の意思で肉体関係をもつことをいいます。一般的に不倫と呼ばれているものが不貞行為にあたると考えてもよいですが、単に、食事をしただけ、デートをしただけなど肉体関係を伴わない場合には不貞行為にはあたりません。
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(2)不貞行為は法定離婚事由に該当する
法定離婚事由とは、裁判によって離婚する際に必要となる一定の事由であり、以下のような法定離婚事由がなければ裁判所に離婚を認めてもらうことができません。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上配偶者の生死が明らかでない
- 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
不貞行為は、法定離婚事由のひとつとされています。したがって、配偶者が不貞行為をしていた場合には、たとえ配偶者が離婚を拒否していたとしても裁判をすることで離婚することができます。
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(3)不貞行為をした配偶者は有責配偶者となる
不貞行為により婚姻関係が破綻したといえる場合には、不貞行為をした配偶者は有責配偶者になります。有責配偶者に対しては、不貞行為を理由として離婚慰謝料の請求が可能です。
また、不貞行為をした有責配偶者による離婚請求は、原則として認められないというペナルティーもあります。有責配偶者が不倫相手と一緒になりたいという理由で離婚を求めてきても、他方の配偶者が離婚を認めなければ、有責配偶者は離婚をすることができません。
2、不貞行為を片方が認めない場合の慰謝料請求
片方が不貞行為を認めない場合でも慰謝料請求をすることはできるのでしょうか。
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(1)不貞行為を認めなくても証拠があれば慰謝料請求は可能
配偶者と不倫相手が不貞行為をしていた場合には、双方に対して慰謝料請求が可能です。
そこで、まずは話し合いによって慰謝料の支払いを求めていくことになります。その際に、片方が不貞行為を認めているのであれば、それを証拠にして、不貞行為を認めないもう片方を説得していくとよいでしょう。
不貞行為が明らかであるにもかかわらず、片方がどうしても不貞行為を認めようとしない場合には、最終的に裁判によって決着をつけることになります。裁判では、不貞行為の有無を証拠によって判断します。不貞行為を証明する証拠があれば、相手が不貞行為を否定していたとしても、不貞慰謝料の請求が認められる可能性が高いでしょう。 -
(2)証拠がない場合には慰謝料請求は困難
不貞行為に関する証拠が不十分な状態で、相手に対して慰謝料請求をしても、不貞行為自体否定されてしまうことが多いです。証拠がない状態では、不貞行為を否定している相手に、不貞行為を認めさせることは困難ですので、話し合いでの解決は難しいといえるでしょう。
また、裁判では、証拠がなければ裁判所に不貞行為の認定をしてもらうことができません。そのため、不貞行為の証拠がなく、片方が不貞行為を認めていない場合には、慰謝料請求は難しいといえます。
3、どのようなものが不貞行為の証拠になるのか
では、どのようなものが不貞行為の証拠になるのでしょうか。以下では、不貞行為の証拠について説明します。
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(1)不貞行為の証拠になり得るもの
配偶者と不倫相手が性的関係をもっている状況を撮影した動画や写真などがあれば、それだけで不貞行為を立証することができます。しかし、そのような証拠が残っていることはあまりありませんので、実際には、以下のような証拠を積み上げていく方法によって、不貞行為を立証していきます。
- 配偶者と不倫相手がホテルや不倫相手の自宅に出入りしている写真や動画
- 配偶者と不倫相手のメッセージのやり取り
- ホテルに宿泊した領収書やクレジットカードの履歴
- 片方が不貞行為を認めた際の音声や誓約書
- 探偵事務所の調査報告書
それぞれ単体では証明力が弱い証拠であっても、複数の証拠を組み合わせることによって不貞行為を立証できる可能性があります。そのため、できるかぎり複数の証拠を集めることが大切です。
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(2)証拠の収集方法
不貞行為の証拠を集める際に気をつけなければならないのが、不貞行為の疑いを抱いているということを相手に悟られないことです。相手に不貞行為の疑いを抱いていることが気づかれてしまうと、証拠を隠滅される可能性があります。また相手は警戒して行動するため新たな証拠を集めることが難しくなってしまいます。
そのため、不貞行為の疑いがあったとしても、すぐに相手を問い詰めるのではなく、まずは、相手に気づかれないようにして証拠を集めていくようにしましょう。① 自分で証拠を集める方法
不貞行為をしている配偶者は、不倫相手と連絡を取るために自分のスマートフォンなどを利用していますので、まずは配偶者のスマートフォンを確認してみるとよいでしょう。その際には、LINEやメールで親密なやり取りをしている異性はいないかどうか、動画や写真のフォルダに怪しい写真がないかどうかをチェックします。
また、配偶者がSNSを利用している場合には、SNSもチェックしてみるとよいでしょう。SNSに不倫相手とのデートや旅行に行った際の写真などをアップしている場合には、それらも不貞行為の証拠のひとつになります。
なお、スマートフォンの確認が不正アクセス禁止法に違反する態様で行われた場合には、こちら側が不利になることもありますので、スマートフォンの確認は慎重に対応しましょう。
② 探偵事務所を利用する
自分で証拠を集める方法には限界がありますので、十分な証拠が得られないという場合には、探偵事務所に調査を依頼することも有効な手段となります。
探偵事務所では、対象者の尾行や張り込みによって行動を監視してくれますので、ホテルに出入りしている状況や不倫相手の自宅の泊まった状況が撮影できれば、不貞行為の決定的な証拠となります。
4、離婚をする場合に事前に考えておくべきこと
配偶者の不貞行為を理由に離婚することを検討している場合、あらかじめ以下のような準備を進めておきましょう。
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(1)離婚条件の検討
夫婦に子どもがいる場合には、親権者をどちらにするのか、慰謝料の金額をいくらにするのか、離婚後の子どもとの面会をどうするのかなどを決めていかなければなりません。また、不貞行為が離婚の原因である場合には慰謝料を決めなければなりませんし、夫婦の共有財産がある場合には財産分与の取り決めも必要になります。
このように離婚時には、離婚届を提出する以外にも取り決めるべき項目がたくさんあります。そのためどのような条件を希望するのかをあらかじめ明確にしておくことが大切です。 -
(2)今後の住まいや生計の確保
離婚によって夫婦は別々に生活することになりますので、離婚後の住まいを確保しなければなりません。引っ越し、家具家電の購入、新居の初期費用などでまとまったお金も必要になりますので、離婚を検討する際には、離婚に向けてまとまったお金を確保しておくことも大切です。
また、離婚後は配偶者から生活費をもらえなくなりますので、生活に必要な収入も確保しなければなりません。 -
(3)弁護士への相談
離婚を決意したものの何から手をつければよいかわからないという方は、まずは、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談をすれば、離婚に向けて必要になる準備について丁寧にアドバイスしてもらうことができ、ご自身の状況に応じた適切な離婚条件も提示してもらうことができます。配偶者に対して、相場からかけ離れた離婚条件を提示してしまうと、トラブルの元となりますのでその意味でも弁護士への相談は有益です。
また、ひとりで離婚を進めることに不安がある場合には、弁護士に依頼をすれば、相手との交渉や離婚調停・離婚裁判などの法的手続きを任せることができますので、安心して離婚を進めることができます。十分な準備をしないまま離婚をしてしまうと、自分に不利な後悔する離婚になってしまう可能性がありますので、離婚を決意した場合には、早めに弁護士に相談をしましょう。
5、まとめ
配偶者の不貞行為が原因で離婚をお考えの方は、すぐに相手に離婚を切り出すのではなく、まずは弁護士にご相談ください。有利に離婚を進めていくためには、不貞行為を裏付ける証拠が必要になります。どのような証拠があれば不貞行為を立証できるのかについては、個別具体的な事案によって異なってきますので、ひとりで判断する前に弁護士に判断してもらうとよいでしょう。
慰謝料請求をお考えの方や離婚を決意している方は、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています