債務整理をすると口座凍結!? 出金・入金の可否や解除時期

2022年10月31日
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債務整理をすると口座凍結!? 出金・入金の可否や解除時期

預貯金口座は、給料の振込先であったり、公共料金の引き落とし先であったりするなど日々の生活に欠かせないものとなっており、ほとんどの方が預貯金口座を保有しています。

このように生活に不可欠な預貯金口座ですが、債務整理をすることによって預貯金口座が凍結され、利用できなくなってしまう可能性もありますので注意が必要です。

今回は、債務整理と口座凍結との関係について、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。

1、銀行の口座を凍結される債務整理はどれ?

債務整理をすれば必ず銀行の口座が凍結されるというわけではありません。以下では、口座凍結される可能性のある債務整理と口座凍結されない債務整理について説明します。

  1. (1)任意整理

    任意整理とは、裁判所を通さず、債権者との交渉によって、将来利息のカットや返済方法、月々の返済額の変更を求めていく方法です。任意整理では、借金の大幅な減額は見込めませんが、債務整理の対象となる債権者を自由に選ぶことができますので、柔軟な債務整理を実現することができる方法といえます。

    銀行の口座が凍結されるかどうかは、任意整理の対象に口座を保有している銀行を含めるかどうかによって変わってきます。任意整理の対象に口座を保有している銀行を含めると、口座凍結される可能性がありますが、任意整理の対象から除外をすれば口座凍結を回避することができます

    なお、過払い金請求も任意整理の一種ですが、銀行は違法な金利でお金を貸してはいませんので、銀行カードローンがあっても銀行に対して過払い金請求をすることはないのです。そのため、過払い金請求によって、銀行口座が凍結されるということはありません。

  2. (2)自己破産

    自己破産とは、裁判所を通して行う債務整理の手続きであり、保有している財産を換価して債権者に分配し、残額については免責を認めてもらうことによって、借金をゼロにすることができる方法です。

    自己破産は、借金問題を根本的に解決することができる方法ですが、一定金額以上の資産を保有している場合には、当該資産はすべて手放さなければならないというデメリットがあります。また、免責不許可事由がある場合(ギャンブル・浪費による借金、財産を不当に隠匿したなど)には、免責を受けられない可能性があります。

    自己破産は、任意整理のように一部の債権者を除いて債務整理をするということができず、自己破産をする場合にはすべての債権者を対象にして行わなければなりません。そのため、債権者に銀行が含まれている場合には、銀行も対象に含めなければならず、それによって銀行口座は凍結されることになるのです

  3. (3)個人再生

    個人再生とは、裁判所を通して行う債務整理の手続きであり、再生計画の認可を受けることによって借金を大幅に減額することができる方法です。自己破産のように資産を手放す必要がなく、免責不許可事由があったとしても利用することができます。ただし、大幅に減額はされますが、全額が帳消しになるわけではなく、借金を返済していくことが必要になりますので安定した収入のある方でなければ利用することができません。

    個人再生も自己破産と同様にすべての債権者を対象にして行わなければなりませんので、債権者に銀行が含まれている場合には、銀行口座が凍結されることになります

2、口座を凍結されるタイミングと解除時期

銀行が口座凍結をする目的は、口座凍結時点で口座内に残っている預貯金と借金とを相殺することにあります。これによって、銀行は、預貯金の残額の範囲内で優先的に弁済を受けることが可能になります。

では、銀行口座が凍結される場合にはどのタイミングで凍結がされるのでしょうか。また、どのタイミングで凍結が解除されるのでしょうか。

  1. (1)銀行口座が凍結されるタイミング

    銀行口座が凍結されるタイミングは、銀行が、弁護士から届く受任通知を受け取った時です。受任通知とは、弁護士が債務者から債務整理の依頼を受けたことを各債権者に通知する書面のことをいい、債務整理の依頼を受けた後、速やかに各債権者に送付することになります。そのため、弁護士に依頼をした後すぐに銀行口座が凍結されると考えておくとよいでしょう。

    なお、支店宛てに受任通知を送ったとしても、当該金融機関において債務整理をしたという情報は、他の支店にも共有されてしまいますので、当該金融機関の他の支店に口座を開設していたとしても、その口座も同様に凍結の対象となります。

  2. (2)凍結が解除されるタイミング

    弁護士から、債務整理の受任通知を受け取った銀行としては、対象となる債務者の口座を凍結し、預金と相殺をしても、債務者に対する債権が残っている場合には、保証会社に対して代位弁済を求めていきます。

    代位弁済とは、保証会社が債務者の借金を代わりに一括返済する手続きです。代位弁済によって債権が銀行から保証会社に移ることになりますので、代位弁済の手続きが完了すれば、銀行は、債権者ではなくなり口座の凍結が解除されることになります。

    代位弁済が完了するまでの期間は、金融機関や保証会社によって異なりますが、一般的に1か月から3か月程度の期間がかかります。

3、口座凍結されている間、出金・入金はできる?

銀行口座が凍結されてしまうと、どのような取引が制限されることになるのでしょうか。

  1. (1)口座凍結によって制限される取引とは

    上述のように、銀行は、預金の範囲内で優先的に弁済を受けるために口座凍結を行いますので、口座凍結がされてしまうと当然口座からの出金は制限されてしまいます。債務者自身による出金だけでなく、クレジットカードの引き落としや公共料金の引き落としなどもできなくなるので注意が必要です

    口座への入金については、金融機関によって運用が異なる部分もありますが、一般的には入金自体は制限されないことが多いです。凍結された口座に給料や年金が入金されると、それらについても相殺の対象になってしまうのではないかと心配される方も少なくありません。しかし、相殺の対象となる預貯金は、口座凍結時点における預貯金となりますので、それ以降入金されたものについては相殺の対象外となります。

  2. (2)口座凍結前にしておくべきこと

    上記のように口座凍結によって、凍結された口座からの出金が制限されることになりますので、口座凍結前には、以下のような対応が必要になります。

    ① 口座凍結前に預貯金を引き出す
    凍結の対象となっている口座が、普段から利用しているメインの口座であった場合には、生活費を引き出せないなどの不利益が生じてしまいます。

    そのため、口座凍結前に当該口座から預貯金を引き出しておくことが必要です。引き出した預貯金は、手元で現金で保管をしておくか、債務整理の対象外の銀行に預けておくとよいでしょう。

    なお、忘れがちですが普通預金口座だけではなく、定期預金口座についても口座凍結の対象になりますので、定期預金口座がある場合には解約などの対応が必要です

    ② 給料や年金の振込先口座を変更する
    給料や年金の振込口座が口座凍結の対象となっている口座である場合には、その変更手続きをしなければなりません。口座凍結後に入金された給料や年金については、銀行による相殺の対象になりませんが、凍結された口座に入金されてしまうと、凍結が解除されるまでの1か月から3か月程度は、引き出すことができなくなってしまいます。

    給料や年金の振込先口座の変更には、ある程度の時間がかかりますので、早めに手続きを進めていくようにしましょう。

    ③ 公共料金などの引き落とし先口座を変更する
    口座凍結の対象となっている口座から公共料金などが引き落とされている場合には、引き落とし先口座の変更が必要です。そのままの状態だと料金未払いとなり、電気、ガス、水道や電話が止まってしまうおそれもありますので忘れずに手続きを行うようにしましょう。

4、債務整理の相談は弁護士へ

債務整理をお考えの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)口座凍結前の対応をアドバイスしてもらえる

    債務整理をした場合に口座凍結されるかどうかは、どのような債務整理を選択するかによって異なってきます。また、口座凍結をされた場合には、当該口座からの出金が制限されることになりますが、口座凍結前に適切な対応を行うことによって、口座凍結による不利益を最小限に抑えることができます。

    口座凍結前の対応を適切に行うためには、専門家である弁護士のアドバイスが不可欠となりますので、まずは弁護士に相談をすることが大切です。

  2. (2)最適な債務整理の方法を提案してもらえる

    債務整理の方法には、任意整理、自己破産、個人再生という3つの方法があります。いずれの方法にもメリットとデメリットがありますので、借金の総額、資産の内訳、収支状況などを踏まえて最適な債務整理の方法を選択することが必要です。

    弁護士に相談をすることによって、個別具体的な状況に合わせた最適な債務整理の方法を提案できますので、借金の問題をより効果的に解決することが可能となります

  3. (3)複雑な債務整理の手続きを任せることができる

    弁護士に債務整理を依頼した場合には、基本的にはすべての手続きを弁護士が行うことができます。一部書類の収集など、ご自身で行っていただく必要があるものもありますが、債権者との交渉や裁判所への申し立てといった複雑な手続きについては、弁護士に任せることで、債務整理に要する負担を最小限に抑えることが可能となります。

5、まとめ

債務整理することによって銀行口座が凍結されることもあり、それによって口座凍結時点の預貯金が相殺されてしまうおそれがあります。

しかし、口座凍結前にすべての預貯金を引き出すなどの適切な対応をとれば、口座凍結による不利益を最小限に抑えることもできますので、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。債務整理をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています