淫行条例とは? 違反となるケースやリスク、弁護士に相談するべき理由とは

2025年11月04日
  • 性・風俗事件
  • 淫行条例とは
淫行条例とは? 違反となるケースやリスク、弁護士に相談するべき理由とは

警視庁の統計によると、令和5年における児童に対する売春や不同意性交などの検挙件数は全体で4418件でした。令和4年の検挙件数に比べると6%増加しており、中でも不同意わいせつや不同意性交などによる検挙が増えています。

18歳未満の者に対する性的な行為は規制されており、各都道府県では「淫行条例」と呼ばれるルールが定められています。しかし、淫行条例とはなにか、またどのようなケースで違反となるのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、淫行条例違反となるケースやそのリスクについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。

出典:「少年非行及び子供の性被害」(警察庁)


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1、淫行条例とは?

淫行条例とは、18歳未満の者との性交および性交類似行為を規制する条例です。しかし、実際に「淫行条例」という名称の条例があるわけではありません。

各都道府県では「青少年健全育成条例」や「青少年保護育成条例」などの条例が定められており、その中の淫行に対する規制が「淫行条例」と通称されています。

  1. (1)淫行条例違反となる条件とは

    東京都の淫行条例は「東京都青少年の健全な育成に関する条例」(以下「東京都条例」といいます)の中で規定されており、条文は以下のとおりです。

    東京都条例 第18条の6
    何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。

    条文を踏まえた淫行条例違反となる条件は、次のとおりです。

    • 18歳未満の者に対する行為であること(青少年、東京都条例第2条1号「十八歳未満の者をいう」)
    • 性交・口淫・手淫などの性的な行為をしていること(みだらな性交または性交類似行為)

    これらの条件を満たしている場合は、東京都の淫行条例違反に該当します。淫行条例の規定は各自治体で異なりますが、同じような内容となっているケースがほとんどです。

  2. (2)違反した際の罰則内容

    淫行条例に違反した場合は、各自治体によって定められた罰則が適用される可能性があります。

    東京都の場合、淫行条例違反の罰則は「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。

    東京都条例 第24条の3
    第18条の6の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

    なお、東京都では淫行条例に違反した者が青少年であった場合、罰則を適用しないと規定しています

  3. (3)児童買春罪との違い

    児童買春罪と淫行条例は、18歳未満の者に対する性的行為を規制する点で共通していますが、適用範囲や該当する条件などに違いがあります

    まず、いわゆる児童買春罪は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(以下「法律」といいます。)にもとづくため、適用範囲は全国です。金銭や物品などを対価として供与し又は供与を約束して、18歳未満の者と性交又は性交類似行為などをした場合に児童買春罪は成立します(法律第2条2項)。

    一方、淫行条例は地方自治体ごとに定められており、金銭や物品のやり取りがなくても成立する可能性があります。

    児童買春罪の罰則は一般的には淫行条例違反よりも重く、「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」です(法律第4条)。

2、淫行条例違反となるケースや裁判例

淫行条例違反に該当するのは、前述した条件をすべて満たしたケースです。具体的な事例や裁判例を通じて、淫行条例違反の実態を確認していきましょう。

  1. (1)誘惑・威迫・困惑させるなどの手段を用いたケース

    誘惑・威迫・困惑させるなどの手段を用いた場合、淫行条例違反となる可能性があります。淫行条例に違反する条件である「みだらな性交又は性交類似行為」とは、警視庁によれば、誘惑・威迫・困惑させるなどの行為も含まれるとされているためです。

    たとえば、18歳未満の者を不安にさせたり判断を鈍らせたりして性交に及んだ場合は、淫行条例違反と判断されるでしょう

    なお、暴行や脅迫などをした場合、淫行条例違反を問われるのではなく、「不同意わいせつ罪」もしくは「不同意性交等罪」に該当します。また、学校教員や塾講師など、児童を指導する立場でわいせつ行為をすると「児童福祉法違反」の処罰対象となります(児童福祉法では「児童」とは、満十八歳に満たない者とされています。)。

  2. (2)自己の欲望を満たすために行われたケース

    18歳未満の者を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交や性交類似行為がされたケースも、淫行条例違反となる可能性があります。警視庁によれば、この場合にも「みだらな性交又は性交類似行為」に該当するとされているためです。
    なお、警視庁によれば、婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある場合は除かれるとされています。

    18歳未満の者について性的欲望を満たすための対象として扱っている場合は、淫行条例違反と判断される可能性が高いでしょう。

    淫行条例違反に該当するか否かは、18歳未満の者が性交や性交類似行為に同意しているか否かは問題とならないため、同意を得ているから問題ないと思っていると注意が必要です

  3. (3)淫行条例違反の裁判例

    淫行条例違反の事例として、さいたま地方裁判所の青少年健全育成条例違反が判断された事例(さいたま地裁平成14年1月15日判決)を紹介します。

    被告人は平成9年1月5日頃、当時11歳である被害者に対して13歳未満であることを知りながら暴行を加え姦淫(かんいん)しました。また平成13年3月9日、当時15歳の同被害者に対して18歳未満の者であることを知りながら性交をしました。

    裁判所は、前者は刑法における「強姦(ごうかん)罪(不同意性交等罪)」、後者は「埼玉県青少年健全育成条例違反(淫行条例違反)」にあたると判断しています。結果として、被告人に懲役5年が科せられました。

    平成13年3月9日の行為が淫行条例違反とされたのは、自分の性的欲望を満足させることのみを目的としてみだらな性交を18歳未満の者とした点を考慮したためと考えられます。

    なお、平成29年6月16日に刑法が改正され、同年7月13日から監護者わいせつ罪・監護者性交等罪が成立することになっているので、上記の事例が今発生すれば、被告人には監護者性交等罪が成立することになります。

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3、淫行条例違反で逮捕されたらどうなる?

淫行条例違反の疑いで逮捕された場合、被疑者はどうなるのでしょうか? 逮捕後の主なリスクについて解説していきます。

  1. (1)前科がつく可能性がある

    淫行条例違反で逮捕されると、前科がつく可能性があります。前科とは、犯罪をおかして刑罰を受けた経歴が記録されることです

    拘禁刑ではなく罰金刑のみの罰則であっても、刑事裁判で有罪判決が確定すれば前科がつきます。

    前科がつくと将来の就職活動や転職活動が制限されたり、特定の資格を取得できなくなったり、特定の国の入国ビザが下りなかったりするデメリットがあります。

  2. (2)実名で報道される

    淫行条例違反で逮捕された場合、マスコミによって実名が報道される可能性があります。

    実名報道されるかどうかについて、法律上明確な基準があるわけではありません。しかし、社会問題となっている事件の場合や、被疑者が公的な職業に就いている場合は実名報道されやすくなるでしょう。

    実名が報じられると、家族や職場・友人などにも知られることになります。また、インターネットを通じて情報が広まり、社会的信用の喪失につながるリスクがあります。

  3. (3)学校や会社をやめさせられる可能性がある

    淫行条例違反によって逮捕されたことが学校や職場に知られると、退学や解雇といった処分を受ける可能性があります。

    学校や会社とは関係のない不祥事であったとしても、逮捕されると長期間無断欠席・欠勤することになります。そのため、逮捕された事実を知られないようにすることは難しいでしょう。

    逮捕に伴う社会的信用の失墜や周囲への悪影響によって、なんらかの処分が下されるリスクは考慮しておく必要があります

    また、児童と関わる仕事をする者の性犯罪歴を確認する規定を盛り込んだ「児童対象性暴力防止法」が令和6年6月19日に成立しました。したがって、令和8年6月19日までには、教員や保育士など児童と関わる仕事に就職する場合には、事前に性犯罪歴の有無が確認されるようになります。

  4. (4)逮捕された場合は身柄を最大23日間拘束される可能性がある

    最大で23日間身柄が拘束される可能性があるのも、淫行条例違反で逮捕された場合のリスクです。

    勾留が決定すると、逮捕されてから最大23日間身柄が拘束されます。逮捕・勾留期間中は家族や職場との連絡が途絶えるだけでなく、社会生活が一時的に制限されてしまいます。

    身柄拘束の引き延ばしによって誤解や偏見が生じるリスクもあるため、できるだけ早期に弁護士へ相談することが望ましいです。

4、淫行条例違反や逮捕されるか不安な方は弁護士へ相談を

淫行条例違反の疑いがある場合や、逮捕されるか不安な方は弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)弁護士であれば、不当に重い罪にならないよう働きかけができる

    弁護士であれば、不当に罪が重くならないよう、いろいろな働きかけができます。

    その一例は、被害者との示談の代理人をすることです。もし示談が成立すれば、逮捕や勾留・起訴を回避できる可能性が高まります。しかし、淫行条例違反では被害者の保護者と示談交渉を進めなければならないため、難航するケースもあるでしょう。

    弁護士が代理で交渉にあたることによって、被害者側の感情に配慮しながら慎重に話し合いを進められる可能性が高まります。

    また、事件の証拠収集や裁判での主張を通して、不当に重い罪にならないよう働きかけもします。

  2. (2)刑事手続きなどのアドバイスができる

    また、弁護士は、刑事手続きに関するアドバイスが提供できます。

    逮捕後の対応や取り調べなどについて、どのように振る舞うべきか悩む方も多いでしょう。弁護士から適切なアドバイスを受けることで、刑事司法に対する理解を深め、適切な行動をとることができます。

    最終的な処分の見通しについても助言が可能なため、不安に思ったときにはまず弁護士への相談を検討してみてください

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5、まとめ

淫行条例は、18歳未満の者に対する性的な行為を規制する条例です。

相手が18歳未満の者であることを知らずに性交や性交類似行為をしていたとしても本来罪は成立しないのですが、捜査段階ではそれが明らかではないために、逮捕される可能性は十分にあります。

18歳未満の者との関係性や逮捕について不安がある場合は、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士へご相談ください。当事務所の弁護士が、状況に応じた最適な解決策を提案いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています