万引き(窃盗罪)の時効は何年? 逮捕されることはある?
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警視庁が公表している犯罪統計によると、令和5年に足立区内で認知された万引き件数は466件でした。
万引きは、窃盗罪という犯罪ですので、万引きをしてしまうと懲役や罰金といった刑罰が科されるおそれがあります。しかし、過去の万引きに関しては、一定期間が経過していれば時効によって、刑罰を科されるおそれはなくなります。万引きをした場合には、どのくらいの期間が経過すれば時効が成立するのでしょうか。
本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・万引き(窃盗罪)の時効について
・万引きで逮捕される可能性
・逮捕された場合の刑事手続きの流れ
過去の万引きで逮捕されるかもしれないと不安を抱いている方に向けて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、万引きの時効はどれぐらい?
どのくらいの期間がたてば、万引きは時効になるのでしょうか。
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(1)刑事事件での万引きの時効
刑事事件では、一定の期間が経過した場合、時効によって公訴を提起することができなくなります。このような刑事事件の時効のことを「公訴時効」といいます。窃盗罪の公訴時効期間は7年とされていますので、万引きから7年が経過すれば公訴時効は成立します。
公訴とは、検察官が裁判所に対して被疑者の犯した罪の審理を求めることをいいます。刑罰を科すには刑事裁判によらなければなりませんので、公訴時効が成立すれば、たとえ罪を犯していたとしても処罰されることはありません。
また、公訴時効が成立すれば、公訴提起に向けて行われる捜査も無意味なものになりますので逮捕される可能性も消滅します。 -
(2)民事事件での万引きの時効
万引きには、上記のような刑事事件での時効だけでなく民事事件での時効も存在しています。
万引きをすると、被害者には、盗まれた商品相当額の被害が生じますので、被害者は、加害者に対して、損害賠償請求をすることができます(民法709条)。被害者が有する損害賠償請求権も、一定期間の経過によって消滅します。これが民事事件での時効です。
万引きによる民事事件の時効は、以下の2つの期間があります。- 被害者が万引きされたことおよび万引きをした犯人をしってから3年
- 万引きが起きたときから20年
いずれかの期間が経過すれば、民事事件の消滅時効は成立しますので、被害者から損害賠償請求を受けることはなくなります。
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2、公訴時効は停止することがある
公訴時効は、一定の事由がある場合には、期間の進行がストップすることがあります。
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(1)公訴時効の停止とは
刑事事件では、公訴時効の停止という制度が設けられています(刑事訴訟法254条、255条)。公訴時効が停止すると、停止している間は時効の進行がストップしますので、その分時効の完成は遅れます。
たとえば、万引きをしてから、5年目に公訴時効の停止事由が生じ、1年間時効の進行がストップした場合、公訴時効が成立するのは7年経過した時点ではなく、8年経過した時点となります。 -
(2)公訴時効が停止する事由
刑事訴訟法では、公訴時効が停止する事由として、以下の3つを規定しています。
① 公訴の提起があった場合
検察官によって公訴の提起があった場合には、公訴時効はその時点で停止し、管轄違いまたは、公訴棄却における裁判が確定したときから進行を始めます。そのため、公訴時効の完成ぎりぎりで検察官から起訴された場合には、刑事裁判中に公訴時効期間が経過したとしても、公訴時効が完成することはありません。
② 犯人が国外にいる場合
犯人が国外にいる場合には、公訴時効が停止し、国外にいる期間は公訴時効が進行することはありません。そのため、処罰を免れるために国外に逃亡していたとしても、公訴時効が成立することはありません。また、罪を犯した後、海外旅行などで何度か海外に滞在していた場合には、その期間は公訴時効の進行に算入されませんので、時効の完成が遅れます。
③ 犯人が逃げ隠れているため、有効に起訴状の送達などができない場合
犯人が国内にいたとしても逃げ隠れていて、有効に起訴状の送達などができない場合にも公訴時効は停止します。この場合の逃げ隠れとは、捜査機関による訴追を免れるために所在をくらますことをいいますので、このような意図がない場合や所在調査などが不適切なために送達ができない場合は、公訴時効は停止しません。
3、万引き事件は逮捕されるのか
万引きをした場合に逮捕されることはあるのでしょうか。
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(1)万引きで逮捕される可能性
万引きというと軽微な犯罪のイメージがあるかもしれませんが、万引きは、「窃盗罪」という犯罪で、10年以下の懲役または50万円以下の罰金という法定刑が定められています。このことからも万引きは、決して軽微な犯罪ではありません。
スーパーなどで万引きをしているところを巡回中の警備員や万引きGメンに目撃された場合には、現行犯逮捕され、通報を受けてやってきた警察官に引き渡される可能性があります。また、その場で逮捕されなかったとしても、防犯カメラの映像などから身元の特定ができた場合には、逮捕状が発行され通常逮捕されるおそれもあります。
このように、万引きだから逮捕されない、ということはありませんので注意が必要です。 -
(2)万引きで逮捕された後の流れ
万引きによって逮捕された場合には、以下のような流れで刑事事件が進んでいきます。
① 逮捕
警察によって逮捕された場合には、警察署の留置施設で身柄拘束が行われます。逮捕中は、たとえ家族であっても面会はできず、面会できるのは弁護士に限られます。
警察は、被疑者を逮捕した場合には、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送検するかどうかを判断します。一般的に、初犯であり被害額も少ない万引きであれば、指紋採取や写真撮影などの手続きを経て、微罪処分によって釈放されるケースが多いです。
しかし、前科がある場合や悪質性の高いケースでは、そのまま身柄拘束が続き、検察官に送検される可能性もあります。
② 勾留
警察から送検を受けた検察官は、24時間以内に勾留請求するかを判断します。検察官が勾留請求をしない場合には、その時点で釈放されます。
検察官が勾留請求し、裁判所が勾留を認めると、10日間の身柄拘束を受けることになります。さらに勾留延長が認められると追加で10日間の身柄拘束を受けますので、最長で20日間の身柄拘束を受けることになります。
③ 起訴または不起訴
検察官は、勾留期間が満了するまでに被疑者を起訴するか不起訴にするかの判断を行います。不起訴処分になった場合にはすぐに身柄が解放され、前科が付くこともありません。
④ 正式裁判または略式裁判
検察官によって起訴された場合には、刑事裁判で万引きの審理が行われ、裁判官から判決が言い渡されることになります。万引きは、法定刑に罰金刑がありますので、略式裁判になった場合には、略式起訴後に被疑者は釈放され、簡易な手続きによって審理されます。裁判の結果、裁判所が有罪と認定した場合には、罰金刑が科されます。
なお、起訴されて正式裁判になった場合には、身柄拘束が続きます。そのため釈放を求める場合は、裁判所に保釈請求をする必要があります。裁判所に保釈請求が認められ、保釈保証金を納付すれば釈放されます。
4、万引きをしてしまったら、早めに弁護士に相談を
万引きをしてしまった場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)今後の対応についてアドバイスをもらえる
万引き事件の当事者になってしまった場合には、早めに弁護士に相談することが大切です。万引きは軽微な犯罪というイメージがあるため「万引きでは逮捕されないだろう」と考える方も多いです。しかし、万引きであっても逮捕される可能性は十分にありますので、逮捕や勾留を回避する方法、不起訴処分による前科を回避する方法などを弁護士と相談する必要があります。
早期に相談をすれば、弁護士が対応できる内容も増えて、より有利な結果になる可能性が高くなります。そのため、万引きをしてしまった場合には早めに弁護士にご相談ください。 -
(2)被害者との示談に対応してもらえる
万引きでは、被害者との間で示談が成立しているかどうかによって、処分の内容が大きく異なってきます。被害者が被害届を提出する前に、示談を成立させれば、そもそも刑事事件に発展することもありません。被害者が被害届を提出した後であっても、早期に示談を成立させれば、逮捕や勾留を阻止したり、早期の身柄解放を実現したりすることができます。
また、示談の成立は、検察官が処分を決めるにあたって重視する事情のひとつですので、起訴・不起訴を判断する前に示談が成立していれば、不起訴処分を獲得できる可能性も高まります。
弁護士であれば、本人に代わって被害者との示談交渉を行うことができますので、ひとりで対応することに不安がある方は、まずは弁護士にご相談ください。
5、まとめ
過去の万引きで逮捕されるかもしれないと不安を抱いている方もいるかもしれません。しかし、刑事事件には公訴時効がありますので、万引きから7年が経過すれば、公訴時効の成立により、起訴されることはありませんし、逮捕されることもありません。
ただし、罪を犯したことが事実であれば、公訴時効を待つのではなく、被害者との示談によって事件を円満に解決するべきといえます。どのような方法で対応するかについては専門的判断が必要な事項になりますので、まずは、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスにご相談ください。
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