スマホの充電で逮捕? 電気窃盗で問われる罪と逮捕される可能性
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足立区が公開している、刑法犯の罪種別認知状況によると、令和5年に足立区で認知された窃盗犯は2917件でした。前年度より429件増加しており、窃盗犯の認知件数はここ数年増加傾向にあります。
「窃盗」といえばお金や貴重品などを盗む犯罪だというイメージがありますが、実は「電気」もその対象に含まれることは知らない方も多いでしょう。店舗や施設の電源を使って無断でスマホを充電するなどといった行為は、罪に問われてしまい、逮捕などに至る可能性もあります。
本コラムでは「電気窃盗」とはどのような犯罪で、どのような刑罰を科せられる可能性があるのか、などについてベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、無断で電気を使用すると罪に問われる? 電気窃盗とは
店舗や施設には、各所に電源を確保するためのコンセントが用意されています。
しかし、これらは店舗内の設備や施設内で電気製品を使用するために設けられているものなので、無断で使うことは許されません。
「ご自由にお使いください」というメッセージや「充電OK」を示すマークなど、コンセントを使用してもよい、という表記されていない限り、無断での使用は控えるべきです。無断で電気を使用してしまうと「電気窃盗」として処罰される可能性があるでしょう。
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(1)電気窃盗とは?
他人の財物を窃取すると、刑法第235条の「窃盗罪」が成立します。
ここでいう財物とは、お金や貴重品などのほか、財布やバッグ、店舗で陳列している商品、自動車やバイクなど、財産的な価値をもつあらゆる有体物が対象です。
一方で、定まったかたちをもたない「無体物」は財物としないと考えるのが通説ですが、刑法第245条は「この章の罪については、電気は、財物とみなす」と明記しています。つまり、電気は「窃盗罪は有体物を対象とする」という原則の例外として、窃盗罪の対象となるのです。 -
(2)電気窃盗が成立する要件
電気窃盗は、窃盗罪のひとつの形態です。したがって、電気窃盗が成立するには窃盗罪が成立する要件を満たす必要があります。
窃盗罪が成立する要件を電気窃盗に当てはめてみると、次のような考え方になるでしょう。- 他人が占有する財物である
窃盗が保護するのは「他人が占有する財物」です。電気は電力会社あるいは利用を認められている契約者のもので、刑法245条により財物とみなされているので、他人が占有する財物にあたります。 - 占有が移転した事実がある
本来の所有者から加害者に財物の占有が移転した事実が必要です。もっとも、占有が移転しなかった場合でもが窃取行為に着手している場合は「未遂」となり、窃盗罪は処罰する規定になっています。
たとえば、無断で、施設のコンセントからスマホに充電しようとプラグを差したのにスマホが故障していて充電できなかったとしても、犯罪を実行したのは事実なので窃盗未遂として処罰されるでしょう。 - 不法領得の意思が存在する
窃盗罪の成立には必ず「不法領得の意思」が必要です。不法領得の意思とは、他人の占有を排除して自分のものにする意思を指します。無断で充電を行った場合、その時点で電気は消費されているわけですから、不法領得の意思は当然認められます。
- 他人が占有する財物である
2、電気窃盗に科せられる刑罰
電気窃盗は窃盗罪として処罰されます。
窃盗罪には10年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられるので、裁判官の判断次第では刑務所へと収監されてしまう犯罪です。
とはいえ、電気窃盗は被害額が小さいケースが多いため、すぐに刑務所へと収監されてしまう事態は考えにくいでしょう。電気窃盗の被害額は電気の使用料金に相当するので、一時的な無断使用ではごく少額の被害しか発生しません。しかし、長期的に電気を無断で使用していたといった悪質な事件であれば、厳しい処分になる可能性があるでしょう。
3、電気窃盗が発覚すると逮捕される?
被害の程度がごくわずかでも、電気窃盗は犯罪です。発覚すれば警察の捜査対象になります。では、電気窃盗が発覚すると必ず逮捕されるのでしょうか?
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(1)必ず逮捕されるわけではない
刑事事件を起こしても必ず逮捕されるわけではありません。「逮捕」とは、被疑者が逃亡または証拠隠滅を図るおそれがある場合に限って認められる強制処分です。
そもそも、警察の捜査方法は犯罪捜査規範という法律によって「できる限り任意の方法で」と定められているので、逮捕を要しない事件では「在宅事件」として処理されます。
在宅事件になった場合は身体拘束を受けないので、必要の都度、警察署に呼び出されて取り調べを受けたうえで、その日の取り調べが終われば帰宅を許されます。 -
(2)電気窃盗で逮捕される可能性が高いケース
被害額が少額だからといって必ず逮捕を避けられるわけではありません。店員に注意されたところ逃げ出した、明らかに無断で盗用していたのに「やっていない」と否定したなど、特に悪質なケースでは逮捕される可能性があります。
また、長期的に電気を盗み続けた場合も、逮捕の可能性が増すでしょう。実際の事例では、延長ケーブルを長くつなぎ合わせて隣接している住宅の外壁に設置されたコンセントへと接続し、7か月にわたって電気を無断盗用した男が逮捕された事件がありました。
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4、刑事事件をおこしたときに弁護士に相談するべき理由
電気窃盗の疑いで窃盗犯として捜査の対象になってしまった場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。
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(1)被害者との示談交渉で迅速な解決が期待できる
窃盗事件を穏便に解決できるもっとも有効な方策は「被害者との示談成立」です。
被害者に対して真摯(しんし)に謝罪し、被害品の返還や被害額の賠償を尽くすことで、被害届や刑事告訴が取り下げられれば、捜査機関は「当事者の間で解決した」と評価して捜査が終結する可能性が高まります。
ただし、被害者との示談交渉を成功させるのは容易ではありません。ほかの迷惑な利用者への警鐘を含めて強い姿勢を示す店舗・施設も少なくないので、個人による交渉での和解は難しいでしょう。被害者との示談交渉は、公正中立な立場の弁護士に一任するのがもっとも安全です。 -
(2)処分の軽減を目指した弁護活動が期待できる
たとえ被害額が小さくても、悪質な意図がなかったとしても、電気窃盗は犯罪です。
「知らなかった」「自由に使ってもいいと思っていた」では済まされません。
ただし、窃盗事件は被害品の返還や被害金額の賠償によって被害者の実害は解消されるため、事件化を避けられなかった場合でも弁護士による示談交渉を尽くせば、処分が軽減される可能性が高まります。
また、弁護士が捜査機関や裁判官に対して積極的なはたらきかけをおこなうことで、悪質な意図はなかった、深く反省しているといった状況が伝わり、不起訴処分や執行猶予といった有利な処分も期待できます。
5、まとめ
電気の盗用は「電気窃盗」として窃盗罪に問われます。自分では、「盗んだ」というつもりがなくても、被害者が申告すれば警察は事件として扱うことになるので、窃盗犯として疑われてしまう事態は避けられません。状況によっては逮捕されて社会から隔離されてしまったり、刑罰を受けて前科がついてしまったりする可能性もあります。
電気窃盗の容疑をかけられてしまい、逮捕や刑罰に不安を感じているなら、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスにご相談ください。刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、解決に向けて全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています