情報商材のオンライン販売で詐欺容疑? 逮捕される可能性はあるのか

2022年07月21日
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情報商材のオンライン販売で詐欺容疑? 逮捕される可能性はあるのか

インターネットの発展によって、さまざまなジャンルのノウハウや成功体験を簡単に発信できるようになりました。情報そのものが有益であるため、オンラインサロンを開いてビジネスとしている方も増えています。

一方で、オンラインサロンを含む「情報商材」に関するトラブルも多発しており、自治体や消費生活センターも注意を呼びかけています。足立区のホームページでも「簡単に高額収入は得られません」と題して、情報商材トラブルへの注意が喚起されているので、気をつけなければいけません。

このような実情があるため、自分自身では有益な情報を発信しているつもりでも、思いどおりの結果が得られなかった顧客から「詐欺だ!」と訴えられてしまう可能性もあります。実際に、情報商材ビジネスで詐欺が成立するのはどのようなケースなのでしょうか。

本コラムでは「情報商材」に関して詐欺罪が成立するケースや、詐欺を疑われてしまった場合の解決法について、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。

1、「詐欺罪」とは|成立する要件や科せられる刑罰

令和3年版の犯罪白書によると、令和2年中に警察が認知した詐欺事件の件数は3万件を超えています。

認知件数の多さでは、窃盗事件がおよそ41万件と圧倒的な件数ですが、窃盗事件を除くと、6万件を超える器物損壊事件の次に多いのが詐欺事件です。したがって、さまざまな犯罪事件のなかでも、詐欺事件は多く発生している犯罪といえます。

詐欺罪とはどのような犯罪なのか、成立の要件や科せられる刑罰を確認していきましょう。

  1. (1)詐欺罪の定義

    詐欺罪は刑法第246条において、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と規定されている犯罪です。つまり、人を欺いて金品などの財物をだまし取る行為をした場合に、詐欺罪として問われる可能性があります。

    詐欺は、オレオレ詐欺・振り込め詐欺といった特殊詐欺、結婚詐欺、不動産詐欺など、手口に応じてさまざまな名称で呼ばれますが、法律の定めに照らし合わせると適用される罪名はすべて「詐欺罪」です。

  2. (2)詐欺罪の構成要件

    犯罪を規定している条文と照らし合わせて、どのような条件を満たすと犯罪が成立するのかを示すのが「構成要件」です。
    詐欺罪の構成要件は次の4点で、すべて満たさなければ詐欺罪は成立しません。

    ● 欺罔(ぎもう)行為
    相手方に財物を交付させるために、虚偽の事実を申し向けて、相手をだます行為です。
    最初から虚偽であることを認識したうえで、だます行為に及んだことを要するため、たとえば、投資のためにお金を預かったが、結果的に投資に失敗した場合のように、だますつもりはなかったが結果が伴わなかったといったケースでは詐欺罪が成立しません。

    ● 錯誤
    欺罔行為を受けた相手が、虚偽の事実を真実であると信じ込んだ状態に陥ったことです。
    たとえ虚偽の事実を申し向けても、相手が信じ込まなければ欺罔とはいえず、詐欺罪は成立しません。

    ● 処分行為
    欺罔行為によって錯誤に陥った相手が、自ら財物や財産上の利益を差し出す行為です。
    「交付行為」ともいいます。相手方の行為によって財物が移転したといえる場合にのみ詐欺罪が成立します。行為者が移転させた場合は、窃盗罪が成立するにとどまります。

    ● 財物の移転
    一連の流れによって、財物や財産上の利益が加害者の手に移転することで詐欺罪が完成します
    欺罔行為、相手方による交付・処分行為があっても、何らかの理由で財物の移転がなかった場合は詐欺未遂です。
  3. (3)詐欺罪で科せられる刑罰

    詐欺罪を犯して有罪になると、10年以下の懲役が下されます
    詐欺罪の刑罰には、禁錮や罰金といった規定がなく、有罪だと必ず懲役刑になることを考えると、重い罪であるといえるでしょう。

2、情報商材販売で詐欺を疑われやすいケース

情報商材とは、商品価値のある情報のことを意味し、情報商材を販売するビジネス形態を「情報商材販売(情報販売)」といいます。近年では、SNSやオンラインサロンといったツールを活用して、ノウハウやマニュアルなどを販売しているケースがありますが、それらも情報商材販売にあたります。

これらの原型となっているのは、楽器演奏などの上達技術を学ぶカルチャースクールや、ペン習字などを自宅で練習する通信講座などが代表的です。しかし、インターネットの発展によって、次第に「必ずもうかる」「絶対に成功する」といった方法論が商材の中心となり、その結果、トラブルを引き起こす原因になっているのです。

なかには実際に詐欺罪が適用されて厳しい処分を受けた事例もあるので、どのようなケースだと詐欺を疑われやすく、処罰される可能性があるのかを知っておく必要があります。
情報商材販売で詐欺を疑われるケースを確認していきましょう。

  1. (1)内容が虚偽だった場合

    情報商材の内容が虚偽だった場合は「欺罔」となるため、欺罔を信じて錯誤に陥った相手が代金を支払えば詐欺罪が成立します。特に問題となりやすいのが「必ずもうかる」などと題して、パチンコ・競馬・株式投資・FXなどの必勝法を商材とするケースです

    何らかの分析や統計をもとに商材を作り上げても、必ずもうかる方法は存在しません。実際は確かな事実もないのに「業界の裏情報」などとしてノウハウを販売することも、詐欺を疑われる可能性があるでしょう。

  2. (2)情報の価値と価格が著しくかけ離れている場合

    たとえば、インターネットで検索をすれば容易に判明する程度の情報であるにもかかわらず、数十万円で販売するなど、情報商材の価値と販売価格が著しくかけ離れている場合も、詐欺を疑われるかもしれません。この場合、顧客が商品を購入したあとに、「だまされた」と感じて警察に相談する可能性が高く、捜査の過程で何らかの虚偽が発覚してしまうケースもあるでしょう。

  3. (3)多数の顧客が被害を申告した場合

    情報商材を購入した顧客の多数が被害を申告した場合は、警察が詐欺を疑い、捜査を行う可能性が高くなります。被害を申告する者が多いからといって、直ちに詐欺罪の成立に影響するわけではありませんが、嫌疑が強まる要因にはなるでしょう。

    特に、インターネットを通じて情報商材を販売する場合には、全国に顧客がいるため、各地の警察が被害申告を受けることになります。同種の事例で事件化した前例のある警察なら積極的な姿勢で捜査を進めるケースもあるでしょう。そのため、販売規模が大きければ大きいほど、被害の申告数も多くなり、詐欺を疑われる可能性が高くなってしまいます。

  4. (4)別の法令違反が発覚した場合

    情報商材の販売において、別の法令違反が発覚すると、事件化の可能性が高くなります。
    たとえば、販売数を限定しているわけではないのに「先着◯名のみの販売」と偽ったり、実際は定価や特別価格などはないのに「24時間限定で50%オフ」などと偽ったりすれば、景品表示法違反が成立します。

    行政庁の調査などの過程で詐欺にあたることが判明すれば、情報提供や告発によって事件化されてしまう可能性があるでしょう。

3、詐欺を疑われた場合どうなる?

詐欺を疑われた場合、その後はどうなってしまうのでしょうか。

  1. (1)逮捕される可能性が高い

    詐欺にあたる行為をしてしまった場合、高い割合で逮捕されてしまいます。

    令和3年版の犯罪白書によると、令和2年中に検察庁が処理した詐欺事件のうち、54.9%が逮捕を伴う身柄事件でした。刑法に定められている犯罪総数の平均が34.8%であったことと比較すると、詐欺事件は「逮捕されやすい犯罪」だといえるでしょう。

  2. (2)身柄を拘束される

    警察に逮捕されると、警察署の留置場に身柄を置かれて警察官による取り調べを受けます。逮捕後48時間以内は、警察による取り調べや実況見分などが行われる時間であり、自宅へと帰ることも、会社や学校へと通うことも許されません。

    その後、検察官のもとへと身柄が引き継がれます。これが事件のニュースなどで「送検」と呼ばれている手続きです。送検されると、検察官によってさらに取り調べを受けます。

    検察官は、これを受けて24時間以内に「勾留」を請求するか、釈放するかを決断しなければなりません。ここで検察官が勾留を請求し、裁判官がこれを許可すると勾留の開始です。初回の勾留は10日間ですが、一度に限って10日間以内の延長が認められるので、勾留の上限は20日間になります。

    つまり、警察段階の48時間と検察官段階の24時間に加えて、勾留の上限が20日間なので、合計すると最大で23日間にわたって、社会から隔離されてしまうおそれがあります

  3. (3)刑事裁判で懲役が言い渡される

    捜査の結果、検察官が詐欺罪の立証が可能であると判断した場合は、刑事裁判が提起されます。これを「起訴」といいます。

    検察官が起訴した段階からは、被疑者は刑事裁判の「被告人」となり、裁判官によって審理されます。検察官・弁護士が示した証拠が取り調べられたうえで、最終回に有罪・無罪の判決と、有罪の場合は法定刑の範囲内で量刑が言い渡されます。
    詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役であるため、有罪になった場合は必ず懲役刑となります。執行猶予がつかなければ、その後刑務所に収監されることになります。

    ドラマなどで描かれる刑事裁判では、劇的な展開から無罪が言い渡される演出もありますが、現実では、そうはいきません。検察官が事前に証拠や捜査状況を吟味して、犯罪を証明できるか判断したうえで起訴しているので、検察官が起訴に踏み切った事件の99%以上が有罪となっています。

4、情報商材トラブルで詐欺を疑われてしまったら弁護士に相談を

情報商材の販売でトラブルになり、詐欺の疑いで逮捕された場合や家族が詐欺を犯してしまった場合などは、すぐに弁護士に相談しましょう。

  1. (1)被害者との示談交渉による解決を目指せる

    前段のとおり、詐欺罪は、ほかの犯罪と比較すると逮捕されやすい犯罪といえます。警察が本格的に捜査を始めれば、逮捕されてしまう可能性が高いので、被害者との話し合いによって迅速に解決することが大切です。

    とはいえ「だまされた」と憤っている被害者との示談を進めるのは容易ではありません。詐欺を犯したと疑われている本人からの申し入れでは警戒心を強めてしまい、相手にしてもらえないおそれがあるので、弁護士が代理人となって交渉を進めたほうが安全です。

  2. (2)早期釈放に向けたサポートが期待できる

    詐欺容疑で逮捕されてしまうと、逮捕から起訴までに最大23日間の身柄拘束を受けるおそれがあります。身柄拘束が長引けば社会から隔離されてしまう期間も長くなり、解雇・退学などのリスクも高まってしまうので、早期釈放を目指すべきです。

    弁護士のサポートがあれば、検察官へのはたらきかけや被害者との示談成立による勾留の回避、裁判官へのはたらきかけによる勾留の阻止、勾留決定に対する準抗告といった手続きで、早期釈放を実現できる可能性が高くなります。

  3. (3)無罪や執行猶予などの処分が期待できる

    情報商材販売に関するトラブルでは、有益な情報を適切な価格で販売していたつもりでも「いわれたとおりに実践しても成果がなかった」などと詐欺を疑われてしまうことがあります。虚偽にあたらない情報であれば詐欺罪は成立しないので、無罪を主張したいと考えるのは当然でしょう。

    しかし、わが国の刑事裁判の仕組みでは、無罪判決を得られる可能性は極めて低いのが現実です。無罪を主張したいと望むなら、経験豊富な弁護士のサポートが欠かせません。

    また、詐欺罪にあたることが事実でも、被害者への謝罪や弁済が尽くされている、深く反省しているといった事情があれば刑の執行が猶予される可能性もあります。執行猶予がつけば刑務所への収監は猶予され、執行猶予期間に犯罪行為を起こすことなく過ごせば、刑の効力が消滅します

    執行猶予を望むなら、刑事裁判において被告人に有利な事情を積極的に示さなくてはならないので、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士の協力が不可欠といえるでしょう。

5、まとめ

「情報商材」の販売は、ノウハウや成功体験を利益につなげるビジネスとして非常に魅力的です。ただし、顧客から「だまされた」と主張されて詐欺を疑われるケースも少なくありません。警察が本格的に捜査を始めれば、逮捕・勾留による身柄拘束を受けたり、厳しい刑罰を科せられたりする可能性もあるので、素早い対応が肝心です。

情報商材販売で詐欺を疑われてお困りなら、直ちにベリーベスト法律事務所 北千住オフィスへご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が、刑の減軽や早期解決に向けて全力でサポートします。

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