高校生は逮捕されない? 逮捕された場合のリスクや逮捕後の流れ
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高校生が罪を犯しても「20歳未満であれば少年法で守られて逮捕されないのでは?」と思われがちです。しかし高校生であっても逮捕されないわけではありません。
たとえば、令和6年には東京都内で一般人にエアガンを発砲するなどして暴行を加えた容疑で高校生が逮捕されたというニュースが報じられています。
高校生の立場で逮捕されると、将来にわたって悪影響が残る可能性があります。本コラムでは、「高校生が逮捕される可能性」「逮捕後のリスクや手続きの流れ」「逮捕されそうな場合の対処法」について、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。


1、高校生でも逮捕される可能性はある
冒頭で触れたように、「高校生は逮捕されない」というのは正しくありません。
一方で、20歳未満で罪を犯した場合、少年法が適用され、20歳以上の成人とは異なる手続きで扱われるのも事実です。
ここでは、少年法の基本的な考え方や、逮捕される可能性がある年齢、実際に高校生が逮捕された事例などについて解説していきます。
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(1)少年法の基本的な考え方
少年法は、20歳未満で罪を犯した場合に適用される特別な法律です。
少年法の主な目的は、罪を犯した少年を単に罰するのではなく、教育的な働きかけによって更生を促すことにあり、事件の解明だけでなく、少年の問題解決と保護に重点を置いています。
ただし、少年法には少年の逮捕を禁止する規定がなく、成人の刑事事件と同様に扱われるため、必要と判断されれば20歳未満の少年であっても逮捕される可能性があります。
また、少年法に規定のない事項(捜査手続き・裁判手続きの進行、控訴や上告の手続きなど)については、成人の刑事事件と同様に扱われることが定められています(少年法40条)。 -
(2)逮捕の対象となる年齢
刑法41条は「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定めています。
つまり、14歳未満の子どもには刑事責任能力がないとみなされるため、処罰も逮捕もされることはありません。
逆に、14歳に達していれば、刑事責任を問われる可能性があり、逮捕されることもあるということです。
もっとも、20歳未満の少年の被疑者についても、なるべく逮捕など身体の拘束を避けるという規定(犯罪捜査規範208条)が存在します。しかし、実際にはこの規定どおりの運用がされているとはいいがたく、逮捕の要件を満たした場合(次項で詳しく後述)は、少年であっても逮捕される可能性があると考えたほうがいいでしょう。 -
(3)逮捕の要件と高校生が逮捕された事例
逮捕が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
- 逃亡するおそれがあること
- 罪証を隠滅するおそれがあること
罪証を隠滅するおそれとは、凶器などの証拠を隠す、共犯者と口裏を合わせる、被害者などに不利な証言をしないよう働きかけるような可能性ということです。
最近では、以下のような高校生が逮捕された事件が報道されています。① 万引きした高校生がしらを切り、翌日、窃盗容疑で逮捕された事件
万引きした高校生が店員に声をかけられても知らないふりをし、防犯カメラの解析で後日逮捕された事件です。逮捕の必要性について議論の余地がある事件ですが、現場で犯行を否認していたという経緯から罪証隠滅のおそれがあると判断された可能性が考えられます。
② 小学生にわいせつな行為をした容疑で高校生が逮捕された事件
判断能力が十分でない小学生が被害者であることから、罪証隠滅のおそれがあると判断された可能性が考えられます。
2、高校生が逮捕された場合のリスク
高校生が逮捕されると、さまざまな面で深刻な影響が生じる可能性があります。
以下では、具体的なリスクについて解説します。
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(1)退学処分など学業への影響
警察に逮捕されると、学校の規則や方針により、退学や停学などの厳しい処分を受ける可能性があります。
また、身柄拘束が続くと長期欠席は避けられず、学業の遅れが生じるため、進級や卒業にも支障をきたすおそれがあります。 -
(2)進学や就職への影響
逮捕のタイミングによっては、受験勉強や就職活動に支障が出る可能性があります。
さらに、学校推薦による進学や就職を希望していても、推薦が見送られるリスクもあります。 -
(3)報道やSNSなどで拡散される可能性
少年犯罪は通常実名報道されませんが、SNSなどで臆測を含む個人情報が拡散されることがあります。
一度ネット上に広まった情報は完全な削除が困難で、いわゆる「デジタルタトゥー」として長期的な影響が懸念されます。 -
(4)交友関係への影響
逮捕されたことが原因で、高校時代の貴重な交友関係が壊れてしまうのは、将来にわたって大きなデメリットになるかもしれません。
また、留置場や鑑別所では、犯罪グループのメンバーなど、犯罪性向の進んだ人物と接点を持ってしまうこともあり、さらなる悪影響を受けるおそれもあります。 -
(5)前科や前歴が残る
前科や前歴は、犯罪歴に関する記録です。逮捕された場合に限らず記録されるものですが、大きな影響があるので、合わせて解説します。
・「前歴」とは
犯罪の疑いで捜査対象になったという警察内部の記録で、生活面への影響はそれほど大きくありません。
・「前科」とは
刑事裁判で有罪となり、刑罰を受けた場合に残る記録です。
医師、弁護士、司法書士や看護師など国家資格の試験や、公務員採用試験などでは、前科があることが欠格事由となるものもあります。
高校生の場合は、前科が残るのは少年審判で刑事処分相当と判断され、刑事裁判で有罪になった場合のみです。
少年が罪を犯してしまった場合は、前科が残らないように早期に適切な弁護活動をすることが重要といえます。
お問い合わせください。
3、高校生が逮捕された後の流れ
高校生が逮捕された後の具体的な手続きの流れについて、段階を追って解説します。
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(1)逮捕
逮捕されると、警察署内の留置施設で身柄を拘束され、事件に関する取り調べを受けることになります。
逮捕後、48時間以内に検察庁に事件が送致されて、24時間以内に勾留の必要性が判断されるので、逮捕による身柄拘束は最大72時間です。この間、弁護士以外の人との面会はできません。 -
(2)勾留または勾留に代わる観護措置
裁判所で勾留が認められると最大20日間身柄拘束が続くことになります。
なお、少年法では、やむを得ない場合を除いて勾留を避けるべきと規定しており、勾留の代替手段として、「勾留に代わる観護措置」という選択肢も設けています。勾留に代わる観護措置とは、収容場所を留置場ではなく少年鑑別所として、収容期間も最大10日間に限られており、少年に配慮した制度です。
しかし、東京の裁判所では、勾留に代わる観護措置が選択されることはほとんどなく、成人と同様に勾留が認められるケースも少なくないのが実態です。 -
(3)家庭裁判所送致
少年事件では、捜査が終わると、すべての事件は家庭裁判所に送致されることになります。家庭裁判所では、少年の心身の状態や生育環境を詳しく調査する必要があると判断されれば、観護措置という決定がなされて、少年鑑別所に収容されることになります。
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(4)観護措置・調査
観護措置の決定がされると、最大4週間少年鑑別所に収容され、心理学的な調査や行動観察、家庭裁判所調査官による調査が行われます。調査の結果、家庭裁判所が少年審判を開く必要がないと判断すれば審判不開始となり、この段階で手続きが終了します。
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(5)少年審判
少年審判は、非公開の審判廷で裁判官が少年と直接対話しながら審理を進め、最終的に「不処分」「保護処分」「検察官送致」の3つから処分を決定します。
① 不処分
非行事実が認められない場合や、保護処分を科す必要がないと判断された場合、不処分となります。
② 保護処分
保護処分とは、少年を更生させるために少年法で定められた処分で、高校生の少年にいい渡される保護処分は以下のいずれかになります。- 保護観察:社会内で更生を図る処分で、保護観察官や保護司の指導を受けながら通常の生活を送ります。
- 少年院送致:少年院に収容して矯正教育する処分です。
③ 検察官送致
保護処分ではなく、刑罰が相当と判断されると検察官送致の決定がなされて、成人と同様に刑事裁判を受けることになります。
なお、以下の重大な罪を犯した場合は、犯行時の年齢によっては、原則として検察官送致されることになります。- 16歳以上:故意の行為により被害者を死亡させた罪(殺人、傷害致死、危険運転致死など)
- 18歳以上:短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪(上記の罪に加えて、強盗、不同意性交等、不同意わいせつ致死傷、現住建造物等放火、建造物等以外放火など)
4、高校生が逮捕されそうな場合は弁護士に相談を
高校生が何らかの犯罪に関与し、逮捕される可能性が出てきた場合、速やかに弁護士に相談することが重要です。
弁護士のサポートを受けるメリットについて解説します。
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(1)身柄拘束を避け、早期釈放を目指す
逮捕を避けるためには、家庭での指導監督や共犯者との接触を避けるなど、身柄拘束の必要性を低減させる環境を整えることが有効です。弁護士を通じて捜査機関や裁判所へ働きかけることで、逮捕を避けたり、早期に釈放されたりする可能性も高くなります。
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(2)示談交渉など重い処分を避ける活動
被害者がいる事件では、被害者との間で和解を成立させ、被害の弁償や謝罪を行うことで、重い処分を避けられる可能性が高くなります。
加害者やその親族が加害者に直接接触するのはリスクがあるので、刑事事件・少年事件の実績がある弁護士に示談を代行してもらうのが賢明でしょう。 -
(3)精神的な不安の軽減
将来への影響について不安を抱えている高校生や家族に対し、弁護士は状況を分かりやすく説明し、取り得る選択肢や今後の見通しについて助言を行います。
過度に悲観することなく、本人にしっかりと更生していく意欲を持ってもらうためにも、弁護士のアドバイスによる精神的な不安の軽減は有意義といえるでしょう。 -
(4)取り調べに対するアドバイスが可能
成人の刑事事件でも、捜査機関の誘導で不用意な供述をしてしまうケースがありますが、未成熟な高校生ではそのリスクはさらに大きくなります。
仮に逮捕されてしまった場合、逮捕直後は弁護士以外と面会することはできません。不当に重い処分を受けることにならないよう、逮捕されそうな段階から取り調べに対するアドバイスを受けられるのは大きなメリットです。
5、まとめ
高校生の年齢に達している少年が罪を犯すと逮捕される可能性があります。20歳未満の少年には少年法が適用されますが、最悪のケースでは、成人と同様に刑事裁判を受けることになり、前科が残るおそれもあります。
高校生が逮捕されると、日常生活や学業に大きな影響がでる可能性は高いといえます。逮捕や重い処分を避けるためにも、早期に弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、高校生など少年が起こした刑事事件について、ご相談を受け付けております。お子さまが逮捕されそうな状況になった場合は、できるだけ早くご相談ください。問題解決に向けて全力でサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています