路上飲酒は犯罪になる?|罪状や罰則を解説
- その他
- 路上飲酒
北千住駅の周辺には、おいしい料理とお酒を楽しめる飲食店がたくさんあります。連日、飲食店街は多くの人でにぎわっていますが、近年ではとくに若い年代の人を中心に「路上飲酒」が増加しているようです。
新型コロナウイルスの感染症の拡大予防を目的とした飲食店の営業制限が、日本各地で路上飲酒が増加したきっかけだと考えられます。また、お通し代なども発生せず、コンビニなどで買ってすぐに飲めるという気軽さや安さ、さらには長年にわたって続く不況なども、路上飲酒が流行する原因になっているでしょう。
しかし、路上飲酒に関しては、ごみのポイ捨てや通行人とのトラブルなどといったトラブルも問題視されています。路上飲酒は犯罪に問われてしまう場合もあるため、普段から路上飲酒をしている人はとくに注意するべきでしょう。本コラムでは、路上飲酒で罪に問われる場合の罪状や罰則などについて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説します。
1、「路上飲酒」そのものを罰する法律は存在しない
以前から、日本には「角打ち」と呼ばれる路上飲酒の風習があります。
製鉄所などで深夜作業を終えた労働者たちが、飲食店が閉店している早朝でも飲酒できる場所として酒屋を選び、店先で酒を飲むようになったのが発祥といわれています。
一方で、海外に目を向けると、路上など公衆の場で飲酒して酩酊(めいてい)することを「公衆酩酊罪」として罰する法律を設けている国も少なくありません。
たとえば、平成30年12月には、有名なサッカー選手がアメリカ・バージニア州において公衆酩酊罪の容疑で逮捕され、罰金を科せられたという事件がありました。
日本には「公衆酩酊罪」は存在しないため、路上で飲酒したり、公衆の場で酩酊していたりしても、ただちに犯罪になるわけではありません。
しかし、飲酒に関連する行為や飲酒する場所などによっては、罪を問われる可能性があるのです。
2、いわゆる「酔っ払い防止法」に違反する可能性がある
路上飲酒そのものは違法ではありませんが、路上で飲酒したうえで、周囲の人に迷惑をかけるような言動をしていると、いわゆる「酔っ払い防止法」によって処罰される可能性があります。
-
(1)酔っ払い防止法とは?
酔っ払い防止法とは、正しくは「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」といいます。
また、「酩酊防止法」や「酩規法」などと呼ばれることもあります。
この法律では、飲酒について節度を保つことを努力義務としたうえで、アルコールの影響により正常な行為ができないおそれのある状態にある者を「酩酊者」と定義して、救護が必要な酩酊者を保護し、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野・乱暴な言動をした者を罰する旨が規定されています。 -
(2)酔っ払い防止法の罰則
この法律は、酩酊し街頭などで暴れている者の安全を確保するため、強制的に身柄を確保する「保護」を執行する根拠として運用されるのが主流です。
ただし、本法第4条1項には、酩酊者が公共の場所や乗り物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野・乱暴な言動をしたときは「拘留または科料」に処する旨が明記されています。
拘留とは1日以上30日未満の刑事施設への収容、科料とは1000円以上1万円未満の金銭徴収という刑罰です。
3、路上飲酒は「道路交通法」に違反する可能性もある
路上飲酒をしていても、粗野・乱暴な言動をするなどの迷惑行為がなければ酔っ払い防止法による規制は受けません。
しかし、「他人に迷惑をかけなければ路上飲酒も合法である」ということにもならないのです。
路上飲酒は、酔っ払い防止法に違反しなくても「道路交通法」に違反してしまう可能性がある点について注意してください。
-
(1)路上飲酒が道路交通法違反になるケース
道路交通法第76条には、道路における禁止行為が列挙されています。
具体的には、いかに掲げる行為が禁止されており、取り締まりの対象となっています。- 道路交通法第76条4項1号
道路において、酒に酔い交通の妨害となるような程度にふらつくこと - 道路交通法第76条4項2号
道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しゃがみ、立ちどまっていること
道路交通法における「道路」とは、車やバイクが通る車道だけでなく、人が使用する歩道もあわせて、一般交通の用に供するすべての場所を含みます。
たとえば、車道や路側帯にはみ出して座り込み飲酒しているという場合や、歩道であっても通行している人の迷惑になるような方法で飲酒しているという場合には、取り締まりの対象になります。 - 道路交通法第76条4項1号
-
(2)道路交通法違反の罰則
道路交通法第76条4項に違反した場合は、同法第120条1項10号の罰則が適用され、5万円以下の罰金が科せられます。
道路交通法違反といえば車やバイクの運転に関する違反行為をイメージする方が多いでしょうが、実際には運転にかかわっていないときでも適用される可能性があるという点に注意してください。
4、自治体の条例違反にあたる場合もある
周囲の人や交通に迷惑をかけていなくても、路上飲酒という行為そのものや、路上飲酒に関連する行為が自治体の条例違反にあたる場合もあります。
-
(1)路上飲酒禁止条例が定められている自治体がある
自治体によっては、路上で飲酒する行為そのものが条例によって禁止されている場合があります。
たとえば、渋谷区では、ハロウィーンや年末カウントダウンなど来街者が増える特定の時期において、渋谷駅周辺の区域を限定し、道路・公園・広場など公共の場所において飲酒することを禁止する「渋谷駅周辺地域の安全で安心な環境の確保に関する条例」を定めています。
この条例が適用される期間・区域においては、路上飲酒という行為そのものが違法です。
渋谷区の条例には罰則が設けられていませんが、路上飲酒が発覚すればイベント会場から強制退場をさせられたり、警察に通報されたりするおそれがあります。 -
(2)街の美化条例に違反するケース
足立区には「足立区歩行喫煙防止及びまちをきれいにする条例」が定められています。
この条例は、街の美化推進を目的として設けられたものであり、路上飲酒そのものは禁止行為には含まれていません。
ただし、ポイ捨てには2万円以下の罰金が科せられるので、路上飲酒をしたあとで空き缶や食べ物のパッケージなどをポイ捨てすると処罰の対象になります。
とくに、禁煙特定区域に指定されている北千住駅・綾瀬駅・西新井駅・竹ノ塚駅・梅島駅・五反野駅の周辺は路上喫煙防止指導員によるパトロールがおこなわれているため、ポイ捨てが見逃されず厳しい対応を受ける可能性は高いでしょう。
5、路上飲酒で罪を問われる事態になったら弁護士に相談を
路上飲酒そのものを罰する法律はありませんが、酒に酔って乱暴な言動をしたり、周囲の人に迷惑をかけたりすることも、違法に行為として処罰される可能性があります。
とくに自治体の条例によって路上飲酒が禁止される期間や場所も定められていることがあるので、イベントなどでほかの地域へとでかける際は注意が必要です。
もし路上飲酒が原因で罪を問われる事態になってしまったら、弁護士に相談してサポートを受けてください。
-
(1)身柄拘束を受けた場合の早期釈放が期待できる
路上飲酒のうえで他人に著しい迷惑をかけてしまう、警察官に素性を明かさない、その場から逃げようとするなどの行為があったりした場合、逮捕されてしまう可能性が高まります。
警察に逮捕されると、その後の勾留とあわせて最長23日間にわたる身柄拘束を受けて社会生活から隔離されてしまうおそれがあるので、早期釈放を目指さなくてはなりません。
弁護士に相談すれば、早期釈放の実現に向けた弁護活動が期待できます。
捜査機関へのはたらきかけ、勾留決定への異議申立てなどの弁護活動が実を結べば、素早い社会復帰につながるでしょう。 -
(2)刑事処分の軽減が期待できる
路上飲酒が法律や条例に違反すると、刑罰を科せられるおそれがあります。
厳しい刑事処分を避けるためには、検察官による「起訴」を避けなければなりません。
起訴を避けるためには、深い反省を示すだけでなく、再び罪を犯さないための具体的な対策を示す必要があるため、経験豊富な弁護士のサポートは必須です。
また、検察官による起訴が避けられない状況でも、弁護士が検察官や裁判官にはたらきかけることで、法律や条例が定める刑罰が軽い方向へと傾く可能性も高まるでしょう。
6、まとめ
路上飲酒を楽しむ人が増えていますが、道路や公共の場所において人に迷惑をかけるような方法で飲酒をしたり、騒いだり、空き缶などをポイ捨てしたりといった行為があると犯罪になる可能性があります。
開放的な気分を楽しめるのが路上飲酒の魅力ですが、他者に迷惑をかけないように節度やマナーを心がけて、法律や条例を順守しなければなりません。
もし路上飲酒が問題となり犯罪の容疑をかけられてしまった場合は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
過度な罰が課されることを回避するために、弁護士が適切に対応いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています