大麻リキッドで逮捕されたら問われる罪|刑罰や逮捕後の流れなど
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大麻リキッドには、極めて強い精神作用や依存性があるため、所持していた場合、逮捕されるおそれがあります。では、大麻リキッドを持っていた場合、具体的にどのような犯罪となり、どのような処罰が待っているのでしょうか。
本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・ 大麻リキッドを持っていることで成立しうる犯罪
・ 大麻リキッドの所持で逮捕されてからの刑事手続きの流れ
・ 大麻リキッドの所持で逮捕された場合の相談先
大麻所持容疑で警察に逮捕されそう、もしくは逮捕されてしまった方やご家族に向けて、ベリーベスト法律事務所 北千住オフィスの弁護士が解説していきます。
1、大麻リキッドとは
「大麻リキッド」とは、大麻の葉や樹脂から抽出したTHC(テトラヒドロカンナビノール)を濃縮した液体のことを指します。
もともと大麻には、「乾燥大麻」「大麻樹脂」「液状大麻」の3つの形状があり、大麻リキッドは液状大麻に分類されます。
大麻リキッドは通称「ハッシュオイル」と呼ばれており、粘着性の暗緑色、黒色タール状をしており、水には溶けない性質があります。
この大麻リキッドには、極めて強い精神作用があります。
まず大麻には、麻酔作用や陶酔効果があり、体内で吸収されると視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚の五感が過敏になり、現在・過去・未来の観念が混乱して思考が分裂し、感情が不安定になるおそれがあります。
特に大麻リキッドを摂取すると、THC成分が脳のカンナビノイド受容体に結合することで「酔っている」「ハイになっている」気分になります。これはTHC成分が脳や細胞間の伝達に影響を与えるからです。
また、大麻リキッドには依存性があります。使用する量によっては身体的な依存のみならず、精神的な依存性があると言われています。
さらに、大麻リキッドを摂取すると、記憶力が低下してしまう可能性もあります。これはTHC成分がシナプスという精神細胞間の情報を受け渡す機能の配線を切断してしまう効果があるからであると言われています。脳の神経回路に異常をきたしてしまうことによって、記憶力の低下を引き起こす可能性があるのです。
2、大麻リキッドの所持は何罪?
大麻リキッドの所持については、大麻取締法の規制を受けます。まず、日本国においては、都道府県知事の免許を受けた大麻取扱者でなければ大麻を取り扱ってはいけません(大麻取締法3条1項)。
大麻の栽培のみならず(大麻取締法24条1項)、譲り受け・譲り渡し、所持も原則として禁止されています(大麻取締法24条の2第1項)。
「営利の目的で」大麻を所持した場合には、「7年以下の懲役」に処せられ、情状により「7年以下の懲役及び200万円以下の罰金」に処せられます(大麻取締法24条の2第2項)。
営利目的の場合も含め、大麻の譲り受け・譲り渡し、所持については、未遂罪も処罰対象とされています(同条第3項)。
3、大麻リキッドの所持が発覚~逮捕後の流れ
大麻リキッドの所持が警察官に発覚して逮捕された場合、どのような流れで手続きが進むのでしょうか。
ここでは発覚から逮捕されて以降の手続きについて解説していきます。
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(1)現行犯逮捕または通常逮捕される
巡回中の警察官に職務質問や所持品検査を受けた結果、大麻リキッドの所持が判明するケースがあります。
この場合、現行犯逮捕または通常逮捕される可能性が高いです。「現行犯逮捕」とは、現行犯人を、逮捕状なく逮捕することをいい(刑事訴訟法213条)、「現行犯人」とは、刑事訴訟法上、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者」と定義されています(刑事訴訟法212条1項)。また、「通常逮捕」とは、捜査機関が、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により被疑者を逮捕することをいいます(刑事訴訟法199条1項)。
警察官が大麻を所持していることを確認した場合には、「現に罪を行い」に該当し、その場で現行犯逮捕することができます。特に、乾燥大麻などは簡易鑑定によって大麻であることが比較的すぐにわかることから現行犯逮捕される可能性がより高まるといえます。
これに対して、大麻リキッドの場合には簡易鑑定ができないため、対象者が所持しているものが大麻成分を含んでいるものなのか否かその場ではわかりません。そのため、大麻リキッドを所持している場合には、該当する物の任意提出(刑事訴訟法221条)を求められることもあるかもしれません。任意提出に応じた場合、当日は帰宅を許され、鑑定の結果を受けて後日通常逮捕されることになるおそれがあります。
警察官など捜査機関に逮捕された場合には、すぐに取り調べが行われ被疑者の調書が作成されます。警察官が留置の必要があると判断した場合には、身体拘束から「48時間以内」に検察官に送致されます(刑事訴訟法203条1項)。
送致されると、検察官は、被疑者の身柄を受け取った時から「24時間以内」(刑事訴訟法205条1項)、かつ、身体拘束から「72時間以内」に被疑者を釈放するか勾留するかを判断しなければなりません(同条2項)。 -
(2)逮捕後、勾留され起訴される
検察官が留置の必要があると判断した場合には、検察官は裁判官に勾留を請求します(刑事訴訟法205条1項)。
裁判官が勾留の決定をした場合、検察官は、勾留請求の日から「10日」以内に公訴提起をする必要があります(刑事訴訟法208条1項)。さらに勾留は「10日」を上限に延長することができるため(同条2項)、勾留請求の日から最大で20日間の身体拘束が続く可能性があります。
このように逮捕に続き勾留が決定された場合には、最長で23日間の身体拘束が継続するおそれがあり、その間、弁護人を除く外部の人間とは自由に連絡をとることはできなくなります。
勾留期間中の捜査や取り調べにより、検察官が刑罰をもって臨むべきであると判断した場合には、起訴されます。起訴されると被疑者は被告人となり、最終的な処遇は裁判によって判断されることになります。 -
(3)刑事裁判にかけられ有罪判決が言い渡される
起訴からおよそ1〜2か月後に刑事裁判が開かれ、審理を経て判決の言い渡しがなされます。
大麻リキッドの所持を認めている場合には、通常1回の裁判で審理は終了し、約2週間後には判決が言い渡されるケースが多いでしょう。
大麻所持の事件で検察官の求刑を上回る刑が言い渡される事案はほとんどないでしょう。基本的には検察官の求刑を参考に刑罰が言い渡されることになります。
言い渡される刑が3年以下の懲役の場合には、裁判官の裁量によって執行猶予が付される可能性もあります。執行猶予付きの有罪判決がでた場合、その日から身柄は解放され、帰宅することができます。
4、大麻リキッドの逮捕でよくある質問
大麻リキッドの所持などで逮捕されてしまった場合、早期に弁護士へ相談することが得策といえます。ここでは、逮捕に関してよくある3つの質問について解説します。
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(1)初犯でも逮捕されて有罪になるのか
大麻所持罪の場合には、初犯であっても有罪判決を受ける可能性があります。
処分や刑罰については、以下のような要素が考慮されて判断されることになります。- 大麻リキッドを手に入れた経緯
- 所持していた大麻リキッドの分量
- 大麻リキッドを所持していた目的
特に、個人的な使用目的で所持していたのか、販売によって利益を得る目的で所持していたのかの違いは大きなポイントです。
営利目的で所持していた場合には、刑が加重されており「7年以下の懲役・200万円以下の罰金」(大麻取締法24条の2第2項)が科されることになります。
さらに、営利目的で、反復継続して大量の大麻を所持していたという場合には、悪質な事案として実刑になる可能性もあります。悪質と判断された場合には、執行猶予が付されず懲役刑が言い渡され、そのまま刑務所に収監されてしまうおそれもあります。 -
(2)所持していた大麻リキッドが微量なら大丈夫か
所持していた大麻リキッドが微量であっても、逮捕・起訴される可能性はあります。
特に大麻リキッドの売買で利益を得る目的があり、大量の流通に関与しており、再犯を犯すおそれがあるという事案であれば、所持している大麻リキッドが少量・微量であっても実刑とされるおそれがあります。
同様の薬物犯罪を繰り返し起こしている場合には、更生する気がなく再び同様の薬物犯罪を繰り返す可能性が高いとして、社会から隔離される懲役刑が言い渡されることになります。 -
(3)未成年でも逮捕されるのか
大麻所持は未成年であっても問題となります。
未成年者の犯罪については、殺人などの重大犯罪を除き、原則として刑罰は科されません。そもそも14歳未満の者は、刑事未成年として刑罰を受けることはありません(刑法第41条)。
14歳以上20歳未満の者は、刑事未成年ではないため逮捕・勾留される可能性があります。
少年事件の場合において、検察官による捜査があったときは、捜査が終わった事件はすべて家庭裁判所に送致されることになります(少年法42条1項)。家庭裁判所による少年審判を行う旨の決定がなされると(少年法21条)、家庭裁判所による最終的な決定がなされることになります。
少年事件の審判で言い渡される審判には以下のようなものがあります。- 不処分(少年法23条2項)
- 知事又は児童相談所送致(少年法23条1項、同法18条)
- 検察官送致(少年法20条1項など)
- 保護処分(少年法24条1項)
未成年者による大麻リキッドの所持で初犯の場合は、保護処分とされるケースが多いでしょう。ただし、悪質な場合には保護処分が選択され、そのうち、少年院送致(少年法24条1項3号)となる可能性もあります。
5、大麻リキッドの所持で逮捕されたら弁護士にご相談を
大麻リキッドの所持で逮捕された場合には、早期に弁護士に相談して弁護活動を依頼することをおすすめします。
逃亡や罪証隠滅のおそれがない場合には、逮捕される可能性は低くなります。そのため、弁護士を通じて、同居の親族が本人を監督することを約束している誓約書などを警察に提出することで、逮捕回避や身体拘束からの早期解放の可能性が高まります。
また、本人が大麻に依存していることを自覚している場合には、社会福祉センターの薬物更生プログラムへの参加の誓約や、実際に受けたプログラムの内容・感想などを報告書として捜査機関に提出することで、起訴を回避できる可能性もあります。
6、まとめ
この記事では、大麻リキッドの所持が発覚した場合に大麻所持罪として逮捕される可能性があり、逮捕から刑事裁判までの手続きの概要などを解説してきました。
大麻所持容疑で警察に逮捕されそうな場合には、逮捕を回避するためにすぐに対処を講じることが重要です。弁護士に相談したうえで適切な対応をとるようにしてください。
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